再生医療(もしくは遺伝子治療)が活発になっている。

それも治験段階ではなく健康保険対象医療としてだ。

 

最近、その高額な薬価(3,349万円)ゆえに新聞紙面を賑わせたのが、白血病の患者で抗がん剤が効かなかった人などを対象とした、免疫細胞に遺伝子操作を加えがんへの攻撃力を高めるキムリア

 

ほぼ同時に保険対象として認可されたのが、重症の動脈硬化で血管がつまった足に、新たな血管を作る遺伝子を注射して治療するコラテジェン

 

私が特に関心を持ったのは、自身の骨髄から抽出した間葉系幹細胞を培養した後に体内に戻すという治療。

NHKスペシャルによるとその効果は絶大で、損傷を受けた脊髄内の神経細胞だけではなく、脳細胞までもが再生するらしい。

 

「間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など、間葉系に属する細胞への分化能をもつとされる細胞」だそうなので、脊髄損傷のみならず神経難病とされている病も治るのでは無いかと期待してしまうが、現在は骨髄損傷のみが対象で、損傷から30日以内の患者限定とされていて、治療を受けられる医療機関も限られる。

 

現段階では間葉系幹細胞の培養施設の容量がネックになっている様だが、儲かるとなれば製薬会社は直ぐにでも設備投資をするだろう。

また、iPS細胞は、血液や骨、皮膚、脳など体の中のすべての組織や臓器になることができる胚性幹細胞を人工的に作り出す多能性幹細胞なので、その培養に成功すれば更に広範囲での効果が期待できそうである。

 

一方で、今は治療を目的として開発されている再生治療の技術が、いつ他の目的に流用されるかに懸念が残る。

 

当初は世のために開発された技術が、邪な目的に転用されるのが世の常なのは、ダイナマイトの例を出すまでも無い。

 

人の体内では、30~40兆個と言われる細胞が日々分裂を繰り返して順次入れ替わっていて、分裂の度に徐々に老化が進むと言われているが、それらが文字通り再生できるのであれば、不老・不死は夢では無い(事故による即死などの再生の時間的余裕が無い死は例外)。

 

個々人によって細胞には分裂できる回数が決まっており、それがいわゆる「寿命」を決めると言われている。

従って、ある程度の年月を生きてきた人の幹細胞を培養して体内に戻しても寿命は延びないのかも知れないが、それをリセットしたiPS細胞や、受精直後の未分化段階での幹細胞が使える様になれば、正に未使用の新品と交換するようなものだ。

不老どころか若返りも出来るかも知れない。

 

受精という神秘的な現象が、生命を誕生させるためでは無く、不老もしくは若返りの手段となる日が来るかも知れない。

 

老化した体で不死と言われても苦しいだけだが、不老、もしくは若返りがセットなら、望まない人は居ないだろう。

 

とは言っても万人にその機会が訪れるはずは無く、ほんの一部の為政者か超富豪のみがその恩恵に浴する事になるのだろう。

「憎まれっ子世にはばかる」の面目躍如だ。

 

始皇帝の夢を実現した習近平が不老不死の体を手に入れて、未来永劫国家権力を手中に収めたままになる。

 

想像したくは無いが、遺伝子操作を施した双子を誕生させる中国の倫理観を考慮すると、そんな日は遠くないかも知れない。