小説・道化のクレヨン(完) | どーも、インターネット初心者です。

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道化のクレヨン(完)



最終話「万劫のコーラス」

エピローグ



そういえば武藤さんが言っていた


人を殺したんだ、って。


大判焼きを食べた後。


公園を過ぎた道の途中。


懐かしい。


まだれいに声をかけることが出来なかった頃。


そういえばあの頃は公園が近くなると気になっていた。


名前も知らなかった彼女のことが。


大判焼きを強請られる前の夏だった。(あれ、奢ったっけ?)


少し前の話をしようか。少し長くなるけど・・・


妹の妃咲が僕の失恋を笑っていたある夏の昼、


僕は気分転換に公園に行ったんだ。


別にギターしに行ったわけじゃないけど。


出逢った(といっても僕が初めて見た)のはその時。


妃咲に感謝だな。失恋を笑ってくれて。


僕が公園に行ったから。あ、いつも夕方だから。


それから声をかけられず、ただ音楽をしていた。


僕は彼女が道端で困っていたおばあさんを助けていたのを見て、それで気になった。


前から気になっていたかもしれないが、その日を境に明確に気になった。


それから確か武藤さんから傘を借りたり、小説も借りた。


面白かったから新刊を買って読んだ。


それから紀伊さんにその本を貸したら、持論を長々と話された。


ああ、そんな夏だった。


僕が行く時間に彼女はいなくて、そんな運命なのかと思ってたら秋になっていた。


確かあの時は占いの結果を気にしていた(何位か忘れたけど)


あの時の発言から一ヶ月くらいして僕はれいと初めて話した。


急に寒くなった10月。


「こんにちわ」ってれいから話しかけてきてびっくりした。


「ファンになってしまいました。」って言われて嬉しかった。


そういえば、お父さんの絵を描いていたんだなあ。


僕たちは付き合ってから、隣で音楽を、絵を描いた。


れいが倒れるまで僕たちは一緒にいたんだ。


一年くらい経ってまだ雪の降らない12月頃。


僕は一週間と少し経ってかられいのいる病院へ向かった。


倒れてすぐ連絡が無かったんだ。


後日、人から聞いてびっくりした。


お見舞いに行った。平日の夕方と土日のお昼。


音楽もしなくて、絵も描かなくて。


それでも僕たちはまだ一緒にいたんだ。


雪が降って1月になって、れいが倒れた。


もうダメだと思った。


事実、僕はダメだった。


一人だったから。


ずーっと何も見てなくて毎日を過ごしていた。


前と変わらずお見舞いに行ったが、前とは違っていた。


そんな時期が一週間とか10日経った頃、


紀伊さんに久しぶりにあった。


励ましてくれて、話を聞いてくれて、おかげでようやく立ち直れたんだ。


それから武藤さんに会って、変な話をした。


あの人はあれでいいんだ。励ましてくれたりとかはあの人らしくない。


前だって仕事で失敗した時に、「まあまあ、落ち込まないの」とは言っていたがそれより昨日テレビ見た?


なんて言う人だから。まあくよくよしてたって仕方ないじゃないって人だし。


まあそんな変な慰め方をしてくれるお姉さんに感謝して僕は病院へ向かったんだ。


「それからは知ってるよね?れい。」


「頭に雪があって白かったー」


れいは今ここにいる。


僕の音楽は届いてなかった。


そりゃあ、冬だし雪降ってたし窓も閉まってたし。


風もあったし。(あ、もちろん風邪引きましたよ)


でもれいは眠っているとき僕の音楽が聞こえたって言ってたんだ。


「不思議だよなー偶然?」


「音楽が聞こえるとは思えないけど気持ちが届いたってことだよ」


まあ心に響く音楽だったってことで。


「あーそうだ、武藤さんの話は?」


「ん?人を殺したって話かー50何歳かの自営業の男だったっけ」


そうだあの秋の話。


れいに会う前の話。


ただ黙って歩いていく武藤さん。


それをただ追いかけていく僕。


武藤さんが止まると風がぴたりと止んだ。


そして僕に、人を殺したことがある。と言った。


「その自営業のおじさんを殺したってこと?」


「確かそうだった、共犯もいてね・・・」


すごくお似合いの共犯。


ネジが取れかかっているような、ボルトが緩んでいるような。


「ジョークとかじゃなくて?」


「結構、真剣に考えていたみたい。」


どっちが考えたのか分からないけど・・・


武藤さんの「もう付き合ってないよ、ううん別れてもないよ。」


の発言にれいは頭を抱えていた。


「おじさんと付き合っていて・・・殺した?だからもう付き合っても別れてもない?」


確かにあの流れじゃ、そう考えちゃうだろう。


「っていうか付き合ってたのは紀伊さんなんだよ。」


「えーっと・・・紀伊さんが共犯?」


「正解。」


それでもまだれいはわからないみたいなので説明した。


「紀伊さんともう付き合っていない、別れてもいない。それで殺した発言だったわけで」


れいはうんうんと頷いている。


「紀伊さんの話と殺した発言は別。」


僕の大判焼き買ってきます発言と同じ。


武藤さんの分も買ってくるっぽい雰囲気で買わない。僕の分だけ買っても嘘じゃない。


紀伊さんとはもう付き合ってない、でも別れてもいない。って発言も本当で・・・


人を殺した発言も本当。


ただ紛らわしく言っただけ。


「別のことを同じことみたいに言ったってことだね・・・ずるーい」


「だから紀伊さんと婚約してたってわけ。」


その当時は付き合っていたわけでもなく別れてわけでもなく、婚約したってこと。


今はラブラブな二人のことを思い出してれいの苦悩のオーラが無くなった。


「じゃあじゃあ殺したって?」


初めての共同作業って具合に面白殺人をしてくれた。


「忌引き作戦を使って会社休んで遊びに・・・」


「えーおじさんが亡くなったことにしてズル休み!?」


それで仲深めて婚約に至ったんだよなあ。


「会社にバレたらやばいよねー笹崎さんは知ってたの?」


「後で気がついた、っていうか殺した発言で紀伊さんが気になったし。」


僕は武藤さんと推理対決をして、勝ったわけで。


「んー笹崎さんの周りって変な人多いよ(失礼)」


「僕は普通だけど・・・っていうか僕のこと名前で呼んでよー」


「えっ、名前て呼んでいいの?」


女っぽい名前だけど呼んでほしい。


っていうか倒れるまでにも呼んでほしいって何度か思っていた時もあった。


でもクリスマスとか違和感無くもう苗字で呼ばれていたからなあ。


「そりゃ付き合ってるんだし・・・」


「えっ?私たち付き合っていたんですか?」


きっかけもなく。たまに名前呼んでほしいって思っても忘れるっていうか・・・


気になるときは気になるけど、気にならないときは気にならない。


まあ今回の倒れた件で武藤さんがそういえば、って言ってくれなかったら気にしなかったかもしれない。


うん、言われたから気になったんだ。


「あれ、そんなつもりなかった?」


「いやいや、私も付き合ってるって思ってたけど・・・」


そういえば付き合うとか彼氏彼女とかはっきりと言ったことなかったなあ。


「じゃあ、付き合っているってことで、名前を。」


「あ、うん・・・『い』・・・」


「・・・・・・」


「・・・ダメかも恥ずかしいー」


「うーん仕方ない、仲を深めるためにもおじさんを・・・」


「え、忌引き作戦ってこと!?」


僕は歩いていく。


れいはゆっくりと追いかけていく。


風が止んだ。


そしてれいに背を向けてこう言った。


「うん、さて人を殺そうか。」


あの秋の武藤さんの雰囲気で僕は発言した。


振り向いてれいに微笑む。


すると黙っていた彼女はこう言った。


「やめとこ、名前ちゃんと呼ぶから。」


ただ何となく人を殺せないんだってさ。



道化のクレヨン(完)