道化のクレヨン
私が病院へ運ばれてすぐ笹崎さんは来てくれた・・・
何てドラマみたいなことはなかった。
こちらから連絡することもできず私はベッドの上。
2日、3日、そして気がつくと一週間と少し経ってから笹崎さんは来てくれた。
ベッドの上で笹崎さんを待っていた私は少しほっとした。
「ごめん全然知らなくて、急に連絡がとれないし」と言っていたので私は、何故ここがわかったのか聞いてみた。
どうやら病院に電話してくれたお店の人から後日伝わったみたいだ。
「あの人は大丈夫?」「え?くわしく聞かせてください」という感じで。
それから毎日お見舞いに来てくれて一ヶ月と少し経った。
第4章「綻のヴィオロン」
白いベッド
もう時期、雪が降るらしい。事実、北国の山の方ではしんしんと降り積もっているとか。
それが本当なら窓を閉めたほうがいいのかもしれない。
でもまだ雪は降ってない、ベッドの上に枯葉が落ちることもないみたい。
しばらく私は入院している。あれから私は絵を描いていない。
お父さんの顔も全く思い出せない。
少しずつ思い出していたのに。
こんな白いベッドの上なんかじゃなくて、笹崎さんの隣で。
お父さんの音楽を弾く笹崎さんの隣で絵を描く。
それが当たり前になっていて時々、目的を忘れそうになったりもした。
別に忘れても良かった。楽しかったから。
今は楽しくない、つまらない。
笹崎さんが来て、話して、そして帰って。
もう少し長くいてほしくても時間が迫る。
静か過ぎる夜が寂しくて物足りない。
夜が一番つまらない。
それなのに、何か考えてしまう。
いつもの夜は明日が楽しみだったり、電話で夜更かししたり・・・
少しだけ素敵な夜だったのかもしれない。
ああ、音楽が聴きたいなあ。
窓の外を見ながら・・・
白いベッドの上で私は呟く、
「笹崎さんギター持ち込んでよ。」
(次回掲載予定は8/1です)