道化のクレヨン
笹崎に貸そうかなこの本。
私は最近話題の人気小説を誰かに勧めたくて仕方がなかった。
そういえば笹崎が「紀伊先輩が小説にハマり出したんですよ」とか言っていたなあ。
まあ笹崎に貸してみるかー・・・
暑い夜、8割ほど目を閉じながら部屋の灯りを消した。
いずれ本人から語られることになるが武藤千夏は人を殺した。
56歳・自営業の男を。
第3章「喜劇のサービス」
アンイージードリーム
とある私だって別に好きで殺したわけじゃない、と武藤は開き直っていた。
殺した男には妻と娘が2人。
これからだって武藤は不安になる。見つからないとは言い切れないのだから。
まだバレてないことが不安を大きくしていた。
引き金になったのは共犯者の存在。
・・・・・・
被害者の家族は殺されたことを知らない。知るはずもない。
「もう開き直っちゃおうかな」
昔から何となく考えていた。
決して相手は誰でもよかったわけじゃない。
計画だって、らしくないけど念入りに立てた。
意外に推理力のある笹崎をたまに監視する。不安だから。
ゲーム内、妄想上は別として、いざ人を殺すとなると本当に覚悟が必要だ。
結局は大学を出て会社に入って1人殺した。
・・・・・・
時々バレる夢を見る。といってもまだ2回しか見たことがない。
夜中の1時を過ぎてもまだ暑い。
喉が渇いて私は目を開けることなく起きた。
そして薄目で電気を点けずに台所を目的に階段を下りた。
蛇口を捻ると生ぬるい水が出る。だが3秒ほどで冷たい水に変わる。
早く秋になればいいのに。
きっと涼しくなるであろう秋が待ち遠しかった。
大判焼屋が待ち遠しかった。
しかし9月まであと10日もある・・・どうしよう。
涼しくなるだろうか、私はくだらない不安も抱えていた。
(第4章「綻のヴィオロン」へ続く)
(次回掲載予定は7/1です)