道化のクレヨン
二種類の殺人。
不満を抱えた人間の殺人と
不満を抱えてない人間の殺人。
前者には生活環境やストレス、感情。
後者には理由が無い。
不満を抱えず、怨みを持たず。
思いつきで何となく、殺したくて。
「やめてくださいよちょっと。」
溝口れいは冷静につっこんだ。
本を読んでいた笹崎は水を一杯飲んだ。
パスタが美味しいと評判の店で、私達はクレオパトラを待っていた。
うーん・・・
どうやら笹崎さんは変な本が好きらしい。
何でも‘当てはめてみよう’という本の殺人の項目を読んでいたらしい。
「あー料理の所を読めばよかった。」
「お店で音読ですか?」
笹崎さんの周りには変な人が多いらしい。
そのせいか笹崎さんもだんだん変になってしまったとか。
どうだろうか・・・
今日私と笹崎さんがここにいるのは少し前の話・・・
10月27日の6日前。
第2章「道化のクレヨン」
殺人
にんじん、たまねぎ、じゃがいも。
お一人様それぞれ3つずつ。
合計300円。
カレー?と尋ねた笹崎さんに私はシチューと答えた。
その後に笹崎さんは「どっちでもいいじゃないか」と呟いていた。
10月21日。
笹崎さんは靴を買った帰りらしい。
手には灰色のビニール袋を持っていた。
私は少しの間、沈黙した。
そしてその後小さくガッツポーズした。
たまたまスーパーの前で見かけたので少し驚いたが、声を掛けることにした。
「こんにちわ笹崎さん。」
「あれ、溝口さん?」
笹崎さんは家に帰る途中だったらしくスーパーを通り過ぎるつもりだったとか。
だが私は手をひっぱった。
野菜の特売があるからだ。
お一人様それぞれ3つずつ。限定の。
「なのでもう一人分お願いします。」
快く受けてくれた笹崎さんはさっそく大きな野菜を探していた。
何か買い物に来た夫婦みたいだなぁ。
私は少しうれしくなった。
「お礼に今度ご飯どうですか?」
私は小さな声で呟いた。
最近おいしいパスタのお店を見つけたんだ。
「いいんですか?」
「はい、いい場所を知ってるんですよ。」
6日後が楽しみだった。
そして・・・
10月27日。
注文して10分ほどで待っていたクレオパトラはテーブルについた。
実は私も初めて食べるパスタだった。
笹崎さんはいつの間にか本を閉じてグラスを持っていた。
「乾杯しましょうか。」
白いパスタが程よくアツアツで体が温かくなる。
食べながら私は思った。
私は理由もなく、ただ何となく人を殺せないなぁ。
いつか機会があったらその本の料理の項目を読んでみたいって思った。
音読はしないけど。
(次回は2本立て(第2章4&第3章) 掲載予定は5/15です)