小説・道化のクレヨン 序章3 | どーも、インターネット初心者です。

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道化のクレヨン



序章「悪戯のキャンパス」

エスパー



少し前を歩き出した僕を武藤さんは鞄で殴り始めた。


ここで食べ物を出そうものなら、くれ。


大判焼屋を通り過ぎようものなら、買って買ってと言い始めるだろう。


幸い、食べ物は持っていないし、大判焼屋もまだ遠い。


いい加減にしてくださいと言っていた頃が懐かしい。


今はもう何も言わない。


毎度のことに呆れた僕は今日も心で嘲る


「おーい無視かー」


それに応えたら無視じゃなくなる。


軽はずみな発言に注意せよ。


沈黙は武藤さんにとって一番つらいことだろう。


僕のマイブームは武藤さんを心で嘲ること。


「笹崎。」


が、いつまでも相手をしてやらないわけにもいかないので溜息で応えた。


「ふー」


「見下すのが楽しい?」


ええ、楽しいです。


見てて飽きませんし。


と言わずに、


「とんでもない。」


作った笑顔と軽い嘘。


さそり座は8位ですもん。


「まったく・・・あ。」


ヤバい。それは予想の範囲内だったがまさか僕が見逃していたとは。


「お、大判焼屋ですね・・・」


違う道から行くべきだった。


公園を曲がってさえいれば・・・


「笹崎君」


「いやすみません、無理です。」


間を入れず僕はにっこりと拒否した。


断固拒否します。


「まだ何もいってないじゃないかー」


「奢りませんからね。」


ちぇっ、と拗ねた口元が自分よりも幼く見えた。


「むしろ、奢ってくださいよ。」


「やだ。」


「ケチ。」


ニヤリと僕は言い放った。


武藤さんは何も言い返せずただ黙っていた。


少し大人気なかったかな。


仕方ないな・・・


「お腹すきましたね。」


「お腹すいたよ!」


そう言われると大判焼きの匂いのせいもあってか、本当にお腹がすいてきた。


「わかりました、買ってきます。」


「おーマジでか!いいの?いいのか!?」


僕は武藤さんを残し、大判焼屋へ向かった。


背広のポケットに手を突っ込む。


あ・・・


「あ、買ってきた?」


もぐもぐ。


「ちょっとちょっと!」


僕は大判焼きを確かに買ってきた。


それを今、冷めないうちに食べている。


「私のは!?」


「え、ありませんよ。」


「嘘つき。」


嘘はついていない。


お腹がすいたので大判焼きを買った。


別に奢るなんて言ってない。


「ご自分でどうぞ、あー美味し。」


僕って嫌なやつ。


「嫌なやつだな、笹崎ー


うわ、思ったことをそのまんま言われた。


エスパーですか。


武藤さんはぶつぶつと言いながら大判焼きを二つ買っていた。


全く甘い考えだ。


僕はそんな洒落に苦笑した・・・



(次回掲載予定は2/1です)