小説・道化のクレヨン 序章 | どーも、インターネット初心者です。

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人生楽しくめでたく行かなきゃ、だからめでたい日記。略して「たい日記」

道化のクレヨン



序章「悪戯のキャンパス」

プロローグ



自動販売機の前で笹崎は立ち止まっていた。


睨み合っているわけではない。


僕には目があるが彼にはもちろん目が無い、一方的に見つめているだけだ。


用件は何ですか?と聞かれてもいいくらいに、


いい加減にしてくださいと言われてもいいくらいに、


僕はその有り触れた無機物に釘付けになっていた。


何となく喉を潤したいと思っていたのも事実だが、


何より新発売の色鮮やかなジュースに興味があった。


再び見つめる。


そして背広のポケットから小銭を出した。三度目だ。


仕舞って、また出して。


何度探っても目当ての十円玉は一枚足りなかった。


こんな日に限って財布の中は氷点下だ。


財布を取り出すまでも無く、僕はまた溜息をついた。仕方ない、コンビニまで我慢しよう。


そう思ったのは夕日の色に反比例して、少し肌寒くなってきたからだ。


身体を軽く解しながら、横断歩道を横切った。


最近暗くなるのが早くなってきた気がする。


事実、夜はもう薄着では寝れない。


夏も終わりか。意識してみると辺りは静まり返っていた。


蝉がいないんだ。


もうそんな季節か。


少し前まではうんざりしていたその騒音。今は少し空しくもある。

秋がまたやって来た。


「おーい笹崎君。」


呼ばれて振り返ると彼女がいた。


少し風が強くなった。


僕らは他愛も無い雑談をしていた。


楽しくて面白くて。


え・・・何て言ったんだ・・・?


僕たちは笑っていた。


でもおかしな人が本当におかしなことを言うと笑えない。


静寂がまたやって来た。


風が止んだ。



「私、人を殺したことあるんだ。」



彼女は僕に背を向けてこう言った。



(次回掲載予定は12/15です)