《アルバム解説》

 

 

 

 本アルバムは、いわゆる「ロシア民謡」集ともいうべき作品であるが、突筆すべきは、レイモン・ルフェーヴルがアレンジのサポートをしている点であろう。厳しいロシアの自然を壮大なスケールで表現するためには、R.ルフェーヴルの「重厚な」オーケストレーションが欠かせなかったと推測される。この時期はR.ルフェーヴルの他にも、ミシェル・コロンビエクリスチャン・ゴベールといったアレンジャーたちがP.モーリアのサポートをしている点も興味深い。日本盤では『二つのギター、ポールシカ・ポーレ/ポール・モーリア・ロシア・ムード』としてオリジナルのまま(曲順は変更)発売された。力強い男性合唱と哀愁を帯びたバラライカの音色が素晴らしい。

 

《曲目解説》

 

1)Plaine Ma Plaine【ポールシカ・ポーレ】

2)Les Deux Guitares【二つのギター】

3)Le Sarafan Rouge【赤いサラファン】

4)Katioucha【カチューシャ】

5)Le Temps Du Muget【モスクワの夜は更けて】

6)Les Yeux Noirs【黒い瞳】

7)Les Bateliers De La Volga【ヴォルガの舟歌】

8)Kalinka【カリンカ】

9)Le Cocher De La Troika【哀愁のカレリア】

10)Evening Bells "Les Cloches Du Soir"【夕べの鐘】

11)Stenka Razine【ステンカ・ラージン】

12)Bublitschki【ブブリチキ】

 

1)日本でもよく知れれているこの曲は、レフ・ニッパー(Lev Knipper)によって作曲された交響曲第4番『Poème aux jeunes soldats』の合唱部分のために作曲された。アルバムのオープニングを飾るに相応しい勇壮なアレンジが素晴らしい。

 

 

2)ロシアの詩人アポロン・グリゴリエフの詩に、イワン・ヴァシリエフが作曲した典型的なロシアのジプシーソングである。シャルル・アズナヴールはこの曲をベースに新たなメロディを加えてシングル盤をリリースした(1960年)。その時のアレンジもP.モーリアであった。

 

 *シャルル・アズナヴール&ポール・モーリア

 

6)ウクライナの詩人イェウヘーン・フレビーンカが妻マリアに捧げた詩を、セルゲイ・ゲルデルが、フローリアン・ヘルマンのメロディをモチーフに歌曲に仕立てた(1884年)。1982年には、この歌をベースにフリオ・イグレシアス「黒い瞳のナタリー」として発表しヒットしたことは記憶に新しい。

《競演》カラベリ(「黒い瞳のナタリー」)

 

9)この曲はロシア民謡ではなく、フランスのAndré Pasdocが創唱したシャンソンである(1941年)。このロシア風のジプシー音楽を、P.モーリアはスケールの大きな楽曲に仕立て上げている。本アルバム中「一推し」の曲といえよう。なお、かつてロシアのフィギュアスケーターのイリーナ・スルツカヤがこのP.モーリアの演奏を使用して大会に出場したことがあった。