《解説》

 

 録音は1973年1月となっているが、本アルバムをして「New パーシー・サウンド」の誕生と位置づけられるのではないだろうか?

 この頃は、いわゆるフュージョンと呼ばれる音楽ジャンル(ジャズを基調にロックやラテン、クラシック音楽などを融合させたもの)が確立された時期と重なり、パーシー・フェイスは一般的なイージーリスニングの範疇を超えて、徹底的に音楽を追求している。

 激しいリズム(ドラムスやパーカッション)、エレピ、ハモンドオルガン等を多用する音作りは、まさにフュージョンそのものである。

 また一方で美しいストリングスを徹底して聴かせる曲も選曲し、従来からの音楽ファンの期待にも十二分に応えている。まさに「静」と「動」が一体化した完成度の高いアルバムといえよう。

 

《曲目解説》

 

1)Clair【クレア】

2)Don't Let Me Be Lonely Tonight【寂しい夜】

3)Ben【ペンのテーマ】

4)Sweet Surrender【スイート・サレンダー】

5)I Can See Clearly Now

6)2001(Also Sprach Zarathustra)【ツァラトウストラはかく語りき】

7)Night In White Satin【サテンの夜】

8)Summer Breeze【思い出のサマー・ブリーズ】

9)Super Fly

10)Happy(Love Theme from“Lady Sings The Blues”)

 【ビリー・ホリディ物語の愛のテーマ】

11)We Were Havin' Some Fun At The Conservatory,When...

 【想い出のコンセルヴァトワール】

12)Dueling Banjos(from the original soundtrack of “Deliverance”)

 

1)「アローン・アゲイン」で一躍有名となったギルバート・オサリヴァンのヒット曲(1972年)で、エレピ、ハープシコードの前奏に、控えめな女性コーラス、ブラスが加わるジャジーなアレンジが素晴らしい。

3)元々はダニー・オズモンドのために書かれた曲であるが、ネズミが主役の映画『ベン』のテーマ曲として、当時13歳のマイケル・ジャクソンが歌いヒットした(全米No.1)。P.フェイスは美しいストリングスで切々と歌い上げている。

6)ブラジル出身のキーボード奏者デオダートが、R.シュトラウスの名曲をフュージョンに仕立て世界中で大ヒットした作品である。P.フェイスはソロプレーヤーのアドリブを随所に配し、スケールの大きな演奏を展開している。

 

7)イギリスのムーディ・ブルースの1967年のヒット曲。この曲も美しいストリングスがどこか切ないマイナー・メロディを奏でている。

10)1972年のアメリカ映画『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』の主題歌で、ミシェル・ルグランのリリカルなメロディをストリングス主体のオーケストラが格調高く演奏している。

 

 

 *1972年のアルバム『Joy』とのカップリングです。