梅雨真っ盛りのこの季節、「田舎暮らしの週末」といえば、まさに「運を天に任せる」というのがぴったりの日々であります。

梅雨の晴れ間に青空が広がり、日差しが照りつけてくれたなら、5時には早起きをして、首にタオルを引っ掛けて、長靴を履いて畑まで。
夏野菜の手入れと雑草を刈り取り、そして、ありがたい自然の恵みに感謝であります。

でも、やはりこの梅雨の真っ只中、やはり週末も雨の日が多くなります。
そんな、梅雨らしい天気になった日は、雨音を子守唄代わりに二度寝を決め込み、ブランチタイムにちょっと遅めのブレックファスト。

予定が立たずに、ぽっかりと空いた時間。
コーヒーカップを片手に本棚を眺めます。

ゆるやかな時間を楽しむには、エッセーなんかがうってつけ。
ちょっと粋で、トリビアも織り込まれ、そしてエスプリもたっぷり効いているのが嬉しかったりするものです。
つまりは、知性も教養もしっかりと身に付けたうえでの品位を保った「大人の軽口」
そこに、ユーモアたっぷりの挿絵があれば、これはもう僕の気分を満足させてくれる一冊であります。


著者は、大正生まれのまさに碩学と呼ぶにふさわしいおひとり。
文筆家としての評価については、いまさら、若輩者の僕がとやかく言う必要もありません。
平成23年に文化勲章を受けられことだけ記しておきます。

その碩学の繰り出す直球あり、変化球ありの変幻自在の軽妙な文章を真っ向から受け止めて挿絵として打ち返すのは、これまた僕がユーモアの天才と尊敬するイラストレーター和田誠氏。

昨今、とかく「ライト」がもてはやされる時代。
でも、ライトにも「薄っぺらいライト」と「奥深いライト」があると思うのであります。
旧制の学制を過ごされた戦中派と呼ばれる先達には、その「奥深さ」があると学ばされます。


雨音をBGMにコーヒーの香りをアロマにひと時過ごすにピッタリの一冊。

猫のつもりが虎 (文春文庫)/丸谷 才一
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