この人の頭の中には、たくさん人が住み暮らす「街」が出来上がっているんじゃないか?

そして、その街の人々の日常をそっと覗き見をして、文章に認めているに違いない。


あまりに素敵過ぎる一冊に、ついそんなことを思ってしまった僕でした。


「あとがき」によれば、きっかけは「刹那」という言葉を偶然気に留めたことなんだそうです。
ひとつの単語のもつ音の「響き」や、文字の「字面」、そして「意味」。
「日本語の美しさ」が、街の住人達と心と心を通じ合わせて織り成す「情景」となって、窓の向こうに見えてくる。
その窓にはめられた擦りガラス。
そこに彫られたのは、淡く半透明な「恋」という名の透かし模様。
ページのなかの情景が「透かし模様」の向こうに見えたとき、この「日本語」という美しい言葉をもつ民族の一人であることが、何だかとっても「贅沢なこと」に思えてきた僕でした。




庭先から聞こえてくるのは虫の啼く音。
少し肌寒さを感じる秋の夜長。

そんな時のお供には、大き目のカップにコーヒーを入れたらウイスキーを注いで作った「アイリッシュ・コーヒー」。


柔らかな湯気が立つカップから伝わるコーヒーの「ぬくもり」を掌に。

素敵なイラストが添えられたショート・ストーリーから伝わる日本語の「情景」を心に。



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