このところ、青空と入道雲にはお目にかかれない。



そのかわり、そよ吹く風は頬にやさしい。



そんなやさしい風に誘われて、夜の海まで独り出てみる。



月のない夜の海辺は、人影もなく暗い闇に包まれて。



暗闇の向こうから耳に響くのは打ち寄せる波音だけ。



堤防に腰を下ろしてしばし波音に耳を傾ける。





冷蔵庫から持ってきた「缶入りハイボール」をポケットから取り出す。


よく冷えた缶の感触を確かめつつ、プルトップを開けひとくち喉に流し込む。




波音とソーダのはじける音が耳の奥で重なった。