目覚めたのは、午前6時過ぎ。
うるさいほどに打ち付けていた雨の音はありません。
恐る恐る窓から外を見ると雨はすっかり上がっています。
車から外に出て東の空を見ると雲の切れ間が淡いオレンジ色に輝いています。
真上を見上げると次々と雲が流れ、どんどん空が広がっていきます。
ファンの皆さんの願いが通じました。
間もなくすべての雲は去り、一面に青空が広がることでしょう。
今日の天気は文句なしの快晴に違いありません。
24時間営業のクアハウスにて、朝風呂。天然温泉でさっぱりし、車に戻って着替えたら、
ゲートをくぐり遊園地内のビュッフェで朝ごはんを頂きます。
コーヒーを飲みながらゆったり過ごしていると大きな窓から朝日が燦々と差し込んできました。
昨日は雨で降ろされていたフラッグも今日は風を一杯に受けてはためいています。
続々とサーキットのゲートをくぐって人がやってきます。
僕も含め、皆さんこの日を待ちわびていました。
予選と決勝が一日で見られるという密度濃い1日の始まりです。
時刻は午前9時を回ったところ。
予選開始は、午前10時ですので、まだ時間はたっぷり在ります。
まだ人の少ないこの時間にじっくり見ておきたい場所へ足を向けます。
F1の世界。
ヨーロッパ文化の象徴とも言われることがあります。
厳然たる階級社会と非欧州に対する閉鎖性が色濃く残るこの世界に日の丸を背負い、果敢に挑んだ日本企業があります。
ブリヂストン
14年間に渡ってタイヤサプライヤーとして各チームの「速さ」をまさに足元から支え続けてきました。
そのブリヂストンが、2010年シーズンをもって、その歴史に一旦ピリオドを打つこととなったのです。
この鈴鹿も「最後の鈴鹿」となります。
そのブリヂストンさんが14年間の歴史を展示した特別ブースを設けていました。
(ブリヂストン特別ブース)
このフラッグとロゴとも今年でお別れ。
どんどん広がる青空に映えるフラッグを見て朝からちょっとだけセンチメンタルな気持ちになった僕でありました。
展示ブースには、実際にレースに提供されたタイヤの実物やテストに使用されたマシンの展示などがあり、これを見られるだけでもかなり貴重な機会です。
それに加えて、14年の歴史を振り返る沢山の素晴らしい写真が展示されているのです。
土曜日にも拝見したのですが、この時は沢山のギャラリーでごった返しており、とてもゆっくり拝見できる状況ではなかったのです。
ですので、この早朝にあらためてじっくり拝見することにしたのです。
(14年間の珠玉の名シーンの数々)
訪れるお客さんもまばらで、1カット、1カット、じっくり拝見することが出来ました。
この中には、我らが宮田正和様 の撮影した写真も沢山ありました。
この宮田様が撮影された2006年のSAF1・佐藤琢磨選手がピット・アウトするシーンには思わず涙が出そうになりました。
F1という異文化の中で戦い続けた日の丸を背負った男達がいたことを日本人として誇りたいと心から思う僕でありました。
さて、スタンドへ。
昨日までとはうって変わって、心地良い秋風が頬を撫でていきます。
視線を東に向けると
(朝日に輝く伊勢湾とその向こうに知多半島)
本当に気持ちの良いまさに「日本晴れ」。
本当に素敵です。この言葉。
あらためて全体を見渡すと早くも熱心なファンの皆さんは応援に余念がありません。
(応援フラッグも風に大きく揺れます)
(中継カメラのクルーさんも準備に余念がありません)
時刻は午前10時。
ついに始まりました。
(ピットから次々とマシンがコースに出て行きます)
結果は皆様ご存知の通り。
P.PはS.ベッテル選手でした。
そして、午後3時。
いよいよ、決勝です。
(各車がグリッドに)
この時、なんとフォーメーションラ・ップ中に1台がリタイアし23台となっていました。
スタート前から波乱の展開でした。
が、本当の波乱はスタート直後にやって来ました。
なんと第一コーナーでクラッシュ発生。
セーフティーカー導入となったのです。
(1周目からセーフティカーに先導されて)
(各車、縦列で進みます)
クラッシュにより4台がリタイア。
さらにタイヤが外れるというアクシデントで1台がリタイア。
先のフォーメーションラップで脱落した1台も加えると、1周目にして早くも6台が姿を消していました。
つまり僕の前に姿を現したときには、18台に減っていたのであります。
ルノーのマシンにいたっては、その姿を見ることもありませんでした。
6周にわたりセーフティカーが先導。
(ようやくシグナル・グリーンでリ・スタート)
レースは、レッドブルの2台が安定した走りを見せていく中、何といっても観客が酔いしれたのは、我らが小林可夢偉のオーバーテイクの場面の数々。
ヘアピンコーナーでマシン同士が接触するギリギリまで攻めながらも鮮やかに抜き去っていく姿にスタンド中から拍手喝采でした。
そして、この日、もっとも頑張ったのは山本左近選手だと思います。
明らかに性能の劣ったマシンを操りながら、必死でT.クロッグ選手を押さえて走る姿は、本当に見事でした。
結果、レッドブルのS.ベッテル選手がポール・トゥ・ウィン。
見事にこの鈴鹿で2連覇達成です。
(両手を掲げて歓喜のポーズ)
表彰式が始まりました。
(トロフィーを高々と掲げて)
(シャンパンファイト~!)
今年も熱狂の時間を過ごす事ができました。
本当に密度濃い一日でした。
日は既に西に傾き、グランドスタンドの屋根を金色に染めていました。
(夕陽に輝くスタンド)
まだ、多くのお客さんがスタンドから動こうとしません。
その頬を夕陽が赤く染めます。
開放されたグランドスタンドでレースの録画が始まりました。
僕もあらためてじっくり観戦。
グランドスタンドでレースを見終えると、すっかり当りは闇に包まれていました。
「日本晴れ」の一日も終わりました。
(空には三日月が)
時刻は20時半を過ぎました。
僕もそろそろサーキットを出る事にしました。
ゲートには
(「来年」の文字が)
そう、また来年。
この「聖地」に帰ってこよう。
「うれしみ(byお花ちゃん様)」の詰まったこの場所に。
そのことを心に決め、素晴らしい空間を体験できた幸せに感謝をしてサーキットのゲートをくぐった僕でありました。
僕の「うれしみ」はまだまだ続きます。
「再会の宴は餃子をたらふく」編へ続く。