水・金・地・火・木・土・天・海・冥(近年は「冥・海」でしたが)



そう、ご存知、太陽系にある「惑星」の名前の覚え方です。

勝手に「惑星数え歌(←歌じゃないけど)」とでも呼んでおきましょう。


この9個の惑星のうち、冥王星。

発見されてから76年たった、2006年8月、ひとつの事件が起こります。

国際天文学連合(IAU)の総会で「惑星」から「準惑星」へと分類が変更されることが、参加した科学者達の投票により「賛成多数」で決まったのでありました。

その当時、このニュースは日本でもかなり大きく報道され、ご記憶の方も多い事と思います。


その報道において、しきりに「アメリカ合衆国による強硬な反対があった」というのを伝えていたのを記憶しており、また、その理由として「アメリカ人によって発見された惑星への「愛着心」」と報じられていたのを今日まで何となく憶えていた僕であります。



この本の著者、実は、今回の「冥王星降格事件」のきっかけを作った「当事者」のお一人なのだそうです。

その当事者によって振り返る「冥王星降格事件顛末記」がこの一冊。


まず著者は、いかにアメリカ合衆国およびアメリカ市民の中に「冥王星」がいかに文化的に深く浸透しているかを詳細に解説していきます。

そこには、ディズニーの超有名なキャラクターまで登場してきます。

また、アメリカ版「水金地火木。。。。。」ともいえる「惑星数え歌」にも冥王星が重要なワードとなっており、また、その数え歌は、アメリカ人が大好きな食べ物がフューチャーされているのだそうです。

そんなアメリカ合衆国のなかで提起された「冥王星は、惑星とは分類できない」と主張する著者らによる行動は、「冥王星を惑星から仲間はずれにしないで」といういたいけな小学生の真摯な嘆願のお手紙まで著者の元に届く始末まで引き起こします。


これらの出来事をはじめとして、3年以上にわたって繰り広げられた全世界の科学者を巻き込んだ大論争事件の全容がレポートされていきます。



この週末、10月3日は、中秋の名月。

夜を楽しむ季節の訪れです。

これから深まる秋の夜長、月や星空を見上げながら「降格」を広角に見るのも一興ではと思う僕なのであります。





かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて/ニール・ドグラース タイソン
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付 記:


この本をはじめ、多くの報道において、この分類変更にたいして「降格」という単語を当てておりますが、天体には、本来「階級的序列はないはず」と考える恣意的に僕は、不必要な「惑星賛美」と惑星以外の天体を見下すようなエゴイズムを感じ、そのことに大きな違和感と嫌悪感を持っていることをあえて付記しておきます。

ただ、その違和感と嫌悪感をもってしてもこの本の「読み物としての面白さ」は十二分であるということをここに重ねて記しておきます。