7月も明日で終わり。
にもかかわらず、長々と居座る梅雨前線のおかげで、梅雨明けは8月に持ち越されることが決定的となったこちら伊勢湾岸です。
そんななかでも梅雨の晴れ間を見計らい、エプ子さん片手に「写す心」と向き合っております。
そして、先日には新しいレンズも手に入れた僕であります。(その顛末はこちら )
新しいレンズは、非常にきりっとしたシャープな写真が撮れる特長があり、写す心と向き合う楽しさが更に広がりました。
本当に良いものを手に入れたと大満足をしている僕であります。
ところで、その新しいレンズですが焦点距離が90mmという仕様であり「望遠レンズ」という範疇に分類されます。
先の記事にも書いたのですが、我が相棒エプ子さんのように「レンジファインダー式カメラ」においては、「望遠レンズでの撮影は不向きである」というのが一般的な「共通認識」なのだそうです。
その理由は
レンジファインダー式カメラでは、望遠レンズのピント合わせが難しいから。
レンジファインダー式カメラの「ピント合わせ」は、ファインダーの中に映るピントを合わせたい対象物とカメラの「距離を測ってピントを合わせる」というメカニズムとなっております。
その方法は、
ファインダーの中にある「画像を重ね合わせる」
ことで行われます。
トレーシングペーパーに絵を写しとったのをイメージしてください。
この写し絵と原画を上下ピッタリと重ね合わせると一枚の絵のように見えますが、紙がずれれば、2重になって見えます。
話をレンズに戻せば、レンジファインダーのファインダー内もそうした2重の「像」があり、その2つの像がピッタリ重なったとき「ピントが合った」ことになるのであります。
すなわち「絵(ピントを合わせたい対象物の像)の2重のずれ」が、「ピントのずれ」ということになるのです。
ところで、カメラのレンズにおいては焦点距離が短い(焦点距離の数字が小さい)ほど、その「ずれ」に対するクリアランスが広いという特徴があります。
つまり、焦点距離の数字が小さいほど、対象物からピントが合っている前後の許容範囲が大きいということになります。
言い方を変えれば、焦点距離が長いほど、つまり望遠レンズになるほどピントが合うの前後の許容範囲が狭くなり、ピント合わせがシビアとなります。
この許容範囲を「被写界深度」と言います。
許容範囲が狭いことを「被写界深度が浅い」と言い逆に広いことを「被写界深度が深い」と言います。
また、レンズは「絞り」を開けるほど、被写界深度が浅くなります(つまり許容範囲が狭くなります)
さて、その「シビアなピント」を「ずれなく合わせる」には、とにも・かくにも「人間の視力」にかかってきます。
自らの「眼」によってしっかり2重像がちゃんと重なっているかを見極める事かに尽きます。
ところが、やはりかなり難しいのであります。
ファインダー内の中央部分にピントをあわせる像が2重になる領域があり、その領域内で画像を重ね合わせるのですが、これが、思いのほか難儀な事であります。
その原因のひとつが、
像が重なる領域が小さいと細かいところが見えにくい
ということ。
いたって単純な話しながら、この領域が大きく拡大されれば、風景の細かなところまで鮮明となり、ピント合わせがより確実さを増すのであります。
ここまで、90mmで練習するものの「ピンぼけ量産中」の僕、ついに「お助けグッズ」へと走ったのでありました。
このファインダー内の風景を拡大してくれるグッズを「マグニフィアー」といいます。
我が相棒エプ子さんにもマグニフィアーももちろんあります。
そのひとつが、MSオプティカルさんがお作りになっている「MS-MAG 1.3X」であります。
1.3Xの名前のとおり、ファインダー内の画像を1.3倍に拡大してくれる性能があります。
そして、このマグニフィアーの優れたところは、「視度補正機能」も備わっているところにあります。
実は、若干近視である僕は、すでにファインダーレンズを「標準装備品」から近視が補正される「視度補正レンズ」に交換しており、補正されないマグニフィアーで拡大してもあらたに別な不都合が出てしまいます。
でもこの製品ならば、その心配もまったく要りません。
本当にありがたい文字通り「お助けグッズ」なのであります。
今週はじめにMSオプティカルさんへ依頼したところ、昨日、現物が届いたのでありました。
さっそく、エプ子さんへ装着です。
(付いているファイダーレンズを外して)
(マグニフィアーを取り付け)
ファインダーレンズが、若干肉厚になったフォルムですが、違和感はまったくありません。
しかも、かえって肉厚になったおかげで、本体と顔の距離が稼げるようになり、これまでの液晶モニターに鼻を押し付けような感じが、随分と楽になるというありがたい結果となりました。
さて、一夜明けて、今日の早朝、夜にしとしと降っていた雨も上がっています。
早速エプ子さんとともに庭先へ。
90mmを試す前に、まずは50mmで感触を確かめます。
ファインダーが拡大されたというのは、何も90mmだけの問題ではありません。
50mmだって、新しいファインダーに慣れなければなりません。
庭の柚子の木にレンズを向けます。
雨上がりのしっとりとした空気には、柚子星人様 に賜ったレンズが似合います。
シビアなピントを克服するのが目的ですので、絞りはもちろん「開放」です。
被写体までの距離は、最短の1m。
親指の先ほどに大きくなった柚子実に雨の雫が滴ります。
ピントリングを最短にしてから、カメラのほうを近づけたり離したりして距離を測りファインダーの像を重ねてやります。
続いて90mmを装着です。
同じく絞りは「開放」。そして、狙った柚子から約2mほど離れます。
被写体の大きさからいって、今までのファインダーなら僕の技量では間違いなくピントが合わなかった相手です。
やはり1.3倍の大きさは違います。
本当にピントが見易いのを実感です。
もちろん、僕の視力に合わせて、昨夜のうちに「視度補正」をしてあります。
(90mm、同じく絞り開放で)
もう一枚、3mほど先の葉っぱに付いた水滴を狙って
(90mm、こちらも絞り開放)
いかがでしょう、これならまずまず合格ではないでしょうか?
50mmにも90mmにも大きなメリットがあると実感いたします。
これから、ますます写す心と向き合う楽しみが膨らみます。
梅雨が明けたら、海辺の風景も切り取りにいこうとも思います。
そして、どんどんと感性に響く風景と出会いたいと思います。
それが今から楽しみな僕であります。
新しい「お助けグッズ」を手に入れ、ちょっとだけ沼が深くなったという一席でした。