すっかり遅くなった日没の後、あたりは闇につつまれる。






風ひとつ無い穏やかな空気に昼間の暖かさの名残りを感じる。






そんな空気に誘われて独りに外に出てみる。








海辺へ続く小路の脇には、一本の山桜の老木。








山桜特有の純白の花びらが月に照らされ暗闇に、いぶし銀色に妖しく光る。








枝の下の腰をおろし桜を見上げる。






満開の白い枝の隙間から十三夜の月が明るく浮かぶ。








ポケットに忍ばせてきた盃にポットから純米酒の熱燗を注いでやる。










一瞬吹き抜けた風に舞い落ちた花びらがふわりと一ひら盃に浮かんだ。