「南の島探訪記」の途中ですが、素晴らしいニュースが北欧の国・スウェーデンから届きましたので、今日はまず、その事を書き留めておきたいと思います。




1952年、1人の日本人が太平洋を渡り、アメリカの地に降り立ちました。

その人は、当時30歳を過ぎたばかり気鋭の理学博士号を持つ物理学者。

博士が目指した先は、アメリカ大陸の東の端、ニュージャージー州プリンストン、その場所建つ世界の最高知能が集結する場所、その名も、プリンストン高等研究所。

かの相対性理論の提唱者アインシュタインや現在のコンピュータ理論の基礎を築いたフォン・ノイマンなども籍を置いたことのある今日においても世界の最高権威の研究所のひとつでした。

ちなみに博士がその研究所に籍をおいた当時の所長は、かの原子爆弾の父、ロバート・オッペンハイマーその人でありました。


物理学を志す若き研究者である博士が、世界の最高頭脳の中でしのぎを削る事がいかに忍耐と努力を要したかは想像に難くありません。

その中で博士は、着実に業績をあげ、そして、研究の場をシカゴに移します。

1970年、博士は、当時の共同研究者とともにひとつの理論を発表します。

その理論は、後に間違いである事が証明されたのですが、その基本的な理論は、後の研究者達に大きなヒントを与え、そして今日いわゆる「超ひも理論」として理論物理学の最先端を切り拓く理論の礎(いしずえ)となっているのです。



その博士は、1960年に、画期的な理論を提唱します。

その理論を「簡単に」説明する事は非常に難しいのですが、物理学がご専門の方にはここからの説明に理論的に齟齬があることには、いささか目をつぶっていただく事をお願いし、「素人なりの理解」のうえでの解説を試みたいと思います。(あくまでも「たとえ話し」の域を出ませんので、くれぐれもご専門の方あるいはお詳しい方にはご寛容に願いたいと再度お願いいたします)



物には「重さ」や「長さ」などの測定できる形がある中で、その形がお互いに影響を及ぼしあっています。

例えば重かったら潰れたり、長かったら、ぶつかったりというのをイメージしていただけると思います。

それぞれの影響しあっている「重さ」や「長さ」などの要因を「エネルギー」と考えていただきたいとおもいます。

さて、この形をどんどん小さくしていくと、物質は「原子」となり、最後はその原子を構成する「電子」や「原子核」といった「素粒子」となります。

さて、その素粒子の世界では、電子が原子核の周りを惑星のように周回して飛び回っていると考えられているのですが、その飛び回る為(影響しあう為)のエネルギーを最も小さくを持っている状態においては、それまで「対称的に並んでいる」と考えれてきました。(その状態を基底状態というのだそうです)


さて、博士は、その基底状態の対称性において、自然が無作為にその対称性を「壊す」対象を壊す事があるということを理論として提唱されたのです。


この理論を「自発的対称性の破れ」といいます。


この画期的理論は、直ちに全世界の物理学者に受け入れられ、その後の理論物理学の発展に多大な影響を及ぼしました。

目に見えない小さな世界の「大きな発見」は、ひとりの偉大なパイオニアの手によって成し遂げられたのです。

以来、博士の名は、数十年の長き渡ってその年の10月を前にして「今年こそは」と周囲が期待してきたのです。




***** 10月8日付け毎日新聞より抜粋転記  ****



スウェーデン王立科学アカデミーは7日、08年のノーベル物理学賞を、米シカゴ大の南部陽一郎名誉教授(87)=米国籍▽高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)の小林誠名誉教授(64)▽京都産業大理学部の益川敏英教授(68)の日本人3人に授与すると発表した。素粒子の理論で先駆的な役割を果たしたことが評価された。

南部氏の受賞理由は、物質の最小単位である素粒子の「自発的対称性の破れの発見」。小林、益川両氏は「CP対称性の破れの起源発見」。素粒子の世界に存在する「破れ」と呼ばれる非対称性の理論化に取り組んだ3氏の業績は、理論物理学の発展に大きく貢献、初めての日本人3人同時受賞につながった。



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見えない世界を切り拓いた偉大なパイオニアに心から祝福の拍手を送りたい僕であります。


南部 陽一郎博士、本当におめでとうございます!!