買い物を済ませ、宮田様のお車のトランクスペースぎっしりのスーツケースと入りきらない荷物を膝に抱えて車のシートへ腰を下ろします。
車は、地下駐車場から通りへでました。
窓から見える景色は、やっぱりどこも絵になります。
この景色を眺めながら、いまさらに「夢の中」にいるような気持ちになりました。
社長も身を乗り出して必死に窓の外を眺めています。
そして、僕からオリ江ちゃんを受け取ると夢中でシャッターを切り続けたのでした。
(車の中から去り行くParisを刻みつけて)
市内を抜けて、車は高速道路に入ります。
いまだ「バカンスシーズン真っ最中」のParisの道路は、混雑もなく快調に進みます。
Parisの街並みが遠ざかり、窓の外が、郊外の風景に変わる頃、息子も窓の外をから目を離し静かにシートに身を沈めています。
息子は、少しうつむき加減の姿勢のまま、大人たちのおしゃべりに静かに耳を傾けてるようでした。
窓の外に空港の施設が見え始め、車は、ターミナルへ続くコースへ入り、あと少しで駐車場まで差し掛かったときでした。
俺、帰りたくねぇ
先ほどまで、静かだった息子が思わずポツリ漏らした一言でした。
口数少なく静かだったのは、けっして疲れが見えたのではなく、彼の心の中が、今まさに去らんとするParisへの惜別の思いに満たされていたからだと、その時、やっと気づいた大人たちでした。
空港に到着し、チェックインを済ませ、最後に免税の手続きを終えるまで、ご夫妻様には、本当に「最後の最後まで」お世話になってしまいました。
特に免税手続きでは、たった1個のバックのために、ご夫妻様を広大な面積のターミナルビルの中を隅から隅まで、はては、隣のターミナルビルまでも走り回らせてしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。心よりお詫びし、そして、あらためまして、深くお礼申し上げます。
すべての手続きを終え、出国ゲートに向かう息子の手に紙の包みが握られているの気づきました。
それは、Parisの名店、POULのクロワッサンでした。
このParisに来て以来、毎日食べ続けた彼の大好物となったクロワッサン。
そのみ様が、空港内のショップまで買いに走っていてくださったでした。
帰国後、このクロワッサンを手に「そのみお姉さんが、空港で買ってくれたんだよなぁ」としんみりとつぶやく息子でした。
最後の最後まで。
何から何かで。
本当にありがとうございました。
「秋にお戻りになられるのを日本で楽しみにお待ちしております」とお伝えし、宮田様より「○○(←息子の本名です)またなっ!」とお声をかけていただき(この4日間でご夫妻様からは、すっかり「社長」ではなく本名で呼んでい頂くようになった息子でございました)
フランス時間 2008年8月13日 18:00
僕たちを乗せた機体は、定刻通りパリの大空に舞い上がったのです。
***** 結びにかえて *******
長々と続いた、漫遊記もようやくひとまず完結を迎えることが出来ました。
今あらためて、この旅をご支援くださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。
また、この旅をネット社会の中で、暖かく見守り、励ましてくださった皆様にも心よりお礼申し上げます。
今日、8月31日。
海沿いの田舎町に住む一人の少年の「9歳の夏休み」が終わります。
その夏休みの「たった4日間」。
見て
聞いて
触って
そして
味わって
この4日間の経験を通して、彼に「心の礎(いしずえ)」を造ってあげられたのであれば、それで良いと信じます。
やがて、少年が青年となり、自らの力で「巣立ちの時」を迎えたとき、この「心の礎」の上に自らの「心の柱」を建ててくれることを心から願います。
そして、その柱の中心には
「地球」という単位でものを見ることが出来る視線が宿っていること
そして
あの「9歳の夏」が、いかにたくさんの愛情に支えられていたかを深く知ること
人様のご縁がいかにありがたく、人が生きていくうえで、最もかけがえのないものであることを「あの9歳の夏」に父が「本当に教えたかった事」だと解ったとき、はじめて、「9歳の夏の旅」は、その終着点を迎えます。
少年の旅は、まだ、始まったばかりです。
「漫遊記第二章」
今度の舞台はどの街でしょうか。
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