小学生の頃、紙テープで作られたリングを渡され、「そこに、引かれた線に沿って、はさみを入れてごらん」と言われ、その通り切り進んでいったら、直径が2倍のリングになったり、鎖状につながったの2つリングが出来てみたり。


そして、何より驚いたのは、そのリングに、自ら線を引いていったら、裏にも表にも線が引かれて、引き始めたところに戻ってしまった・・・・・。


何とも不思議な、その日の体験は、今も鮮明に僕の記憶の中にいます。


その不思議なリングの名前が、「メビウスの帯」だということを知ったのは、もう少し後のことだったような気がします。





「面がひとつしかない」





この不思議な形状について、その先駆者であるアウグスト・F・メビウスの生涯に言及しつつ、謎を解き明かすための「数学的アプローチ」はもとより想像力豊かな「芸術分野」の作品の数々や特許をはじめとした「技術分野」での様々な発明そして最先端の「宇宙物理学」での研究成果」まで、多くの図解や写真、そして、コンピュータ・グラフィックをも駆使して「そのいとこたち(本書12頁より引用)」である、「クラインの壷」や「実射影空間」などへも話題を広げつつ、軽妙洒脱な文章で紹介してくれます。





「めぐり・めぐって、あらっ?出発点!?」




というのは、人生哲学的には、なかなか「悩ましいもの」ですが、でも、この世界でなら、「陰に籠ることなく、悲嘆にもくれず」に楽しむことが出来てしまう。



そんな、知的好奇心をくすぐってくれるとても愉快な一冊です。








クリフォード・A・ピックオーバー, 吉田 三知世
メビウスの帯


**** 付  記 *****

僕は、このリングをこれまで、「メビウスの輪」と呼んでおりましたが、本書では、すべて「メビウスの帯」と記述されております。
よって、記事の文中においては、本書の記述に合わせ「メビウスの帯」と記しております事をここにお知らせいたします。

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