弱小部品メーカーに身を置いて、IT領域全般を統括する立場なんぞにおりますと、本当に様々な守備範囲がございます。


小さい事では、パソコンのパーツ交換から、大きいことでは会社組織全体のIT戦略の企画・立案そして推進まで。


毎日、盛りだくさんの日々を楽しく(?)送っております。




そんな中で、大切なミッションのひとつに社内への「情報ポリシーの教育・徹底」というのがあり、その、知識研鑽のため、先般ひとつのカンファレンスに出席してまいりました。





カンファレンスのテーマは、





「インターネットと著作権」





このテーマで、法令の解釈や実際の企業内での運用に対する留意点などを僕のようなIT活用企業、コンテンツ制作会社、そして弁護士や主管官庁の専門家が出席して議論・検討したのですが、その中で、僕を含めたブロガーの皆さんにもお役に立ちそうな話題がありましたので、ご紹介したいと思います。




僕も含めて、記事を書く時、他の方が著されたり、創作されたものを複製(コピー)したり、一部分を引用する場合があります。


また、自分自身が、書いた記事や、写した写真などを記事として表わしています。


これには、それを利用するに当たっての権利が著作権法という法律によって守られているということは、ご存知の方も多いかと思います。




著作権法の第30条には、「個人の使用を目的とした場合」においては、著作物の複製(コピー)が許されると規定されているのですが、そこには、複製を許さないとする条件が付けられております。


その条件のひとつが




公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合(著作権法30条-1)




というものであり、この「公共の使用を目的として設置されている自動複製機器」というものに僕達が記事を書き込み発信を引き受けてくれるアメブロなどのサーバーが含まれると解釈するべきのようなのです。


つまりは、どなたかが書かれたり、写されたりした文章や写真は記事にするに当たっては、




「勝手にコピーしてはならない」




ということになります。




では、自分の記事の中に他の方の著作物を引用する場合はどうでしょうか。


もうひとつの条文として32条には、「引用」に対する規定があり




公表された著作物は、引用して利用することができる。(著作権法32条本文)



と規定されております。


ただ、この場合にも、ちゃんと条件が定められており、




この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない(著作権法32条本文)



と、引用が許される範囲が明確に規定されているのであります。




これによれば、個人の書くブログの記事は、その目的が通常「報道」とは見なされないので、著作物を引用するには、ブロガー個人の批評なり研究成果などの「オリジナルな結論」を表明し、その「オリジナルな結論こそ記事の骨子である」と客観的に認められ、かつ、その引用が「オリジナルな結論を出すに引用という補強が不可欠である」ことが引用が許される範囲という解釈になります。


僕の場合を例にすると、この田舎駄ブログに「本」というテーマを持っており、自分が読んだ本をご紹介するに当たって、記述内容を引用する事がありますが、「本の感想や批評する」ことを骨子とする記事であれば、引用は許されることとなります。


どうやら、これまでのところ僕の場合、法令遵守はできているようです。




さて、僕は、これまでほとんど活字となったものを引用することが多かったのですが、この場の議論として、「メールマガジンなどのディジタル表現物はどうなのか」ということが話題になりましたので、その点もご紹介します。


こちらについても、著作物ですので、複製は駄目だが引用は許されるということになります。


ですので同様に、記事を書くに当たって「補強」することが合理的に認められるか否かにかかっております。


したがって、単に「こんなニュースを知りました」という紹介の主旨で記事を書きたい場合では、配信された記事文や画像を転用する事は、「引用」には当たらないという事を認識しておかなければいけないでしょう。


配信元においても、こういった事態を想定し、その防護策として著作権の取り扱いについて告知をするのが一般的のようです。


たとえば、日経BP社などは、自社のメールニュース配信サービスにおいては、「単にかぎカッコを付け,出所を表示しただけでは判例等で示されている要件を充足せず,著作権法第32条で定めている「引用」には該当致しません」とそのガイドラインをはっきりと明示するなどの広報に努めていたりしております(日経BP社のオンラインニュースに著作権に対する見解こちらです)


尚、こうして、URLをリンクする事は、言い換えれば「単に住所を表示した」ことと変わりなく、なんら問題はないそうです。


ですから、こういったメールニュースの記事を紹介したいときは、その配信元が、会員登録などの方法でそのサイトの閲覧読者を特定あるいは限定している場合などを除き、こうしてURLをリンクして直接に原文が読めるようにするのが良いでしょう。


もちろん、著作権を有する個人や企業から使用を許諾していただければなんら問題はありません。(使用許諾に当たっての提示された「条件範囲内」の利用である事は言うまでもありませんが)






ディジタル・テクノロジーによって様々な情報が手軽に手に入る時代において、ともすれば大切な権利である「オリジナル」というものを侵害しかねない事をテクノロジーの恩恵を受ける僕達も常に認識していなければなりません。


ディジタルテクノロジーを活用するブロガーである僕達は、「交通ルール」と同じように身近なものという感覚で「著作権ルール」を心に留めなければいけないのだとあらためて再認識したのでありました。