明治34年11月。

イギリスはロンドンに留学中の一人の日本人の元に一通の手紙が届きます。

その手紙は、次のような書き出しで始まります。



僕ハモーダメニナツテシマツタ、毎日訳モナク号泣シテ居ルヤウナ次第ダ



こんな深刻な書き出しで始まる手紙を書いた差出人は、手紙の中ほどで、とある問いを尋ねてきます。




倫敦ノ焼芋ノ味ハ

ドンナカ聞キタイ。





手紙を受け取ったのは、若き日の夏目漱石。

そして、「ネガティブなのか、ポジティブなのか」、傍から見ればなんとも困惑しそうな手紙を書いたその人物とは、旧制高校時代から漱石とは、大の親友だった、俳人・正岡子規その人でした。




自らが俳人であり、また、当代随一の正岡子規の研究者である著者が、ご自身の身の回りに起こった日常の出来事や情景を縦糸にして、正岡子規と夏目漱石を中心に文人・俳人たちのあまり知られていないエピソードを横糸に織り交ぜながら、軽妙洒脱な文章で綴ったエッセイ集。

今まで知らなかった子規や漱石に出会えるのも楽しい一冊です。




坪内先生によれば、漱石さんって、お米がイネの実だということを高校生になって子規が教えてくれるまで知らなかったんですって!!





坪内 稔典
子規のココア・漱石のカステラ