何とも、奇妙な切り口である。

「逆説的アプローチ」の最右翼に位置するのではないかと思う。

建築物・建造物を論じるに「崩れる」を主眼におくとは、いやはや恐れ入る。

ところが、この視線だからこそ見えてくる様々な示唆に富む検証の数々は、知的好奇心を掻き立てられずにはいられない。



「建築史」を専門とする著者が、古今の建築物の「崩壊」にまつわる事象を示しながら、建築工学の解説を織り交ぜ、そこに潜む歴史背景や文化観の違いなどを解き明かしていく。



「くずれの科学」


そんな言葉が相応しい一冊かもしれない。


佐藤 彰
崩壊について