あの日。



本州上陸を窺っていた台風が、その進路をどちらに向けるのか。

朝からインターネットで目を光らせながら緊張の一日を過ごしていた。



どうやら、直撃は免れる判断して、帰宅をしたのは、あと数時間で日付が12日に変わろうとしていた頃だったと思う。

一人、ソファに腰を下ろして本を開いていた僕が、ふとテレビの画面に目をやると、一行のニュース速報のテロップが流れた。




ニューヨークで旅客機が、墜落炎上した模様



そんな、内容だったように思う。


そして程なくして、煙を上げた二つビルが、画面に映し出された。


画面を見ながら、まるで映画のワンシーンのようだなと思った。



画面を見て、たとえ、ひと時でもそれが、現実の出来事として見ることがなかった。






自分の愚かさを思い知らされたこの日のことを決して僕は忘れない。



本質を見極める目を持っていなかった自分への悔しさが、今も変わらず僕の心の中にいる。