一九二二年、私は日本政府から名誉ある招聘を受け、仙台の東北帝国大学に赴任した。(本書1頁 「まえがき」より)
著者は、当時すでに欧州において植物学の権威としてウィーン大学の植物生理学教室の主任教授の職にあったが、、東北帝国大学の招きより仙台に赴任する事となった。
彼に託されたのは、東北帝国大学に新設された生物学教室の基盤を作ること。
その彼が、日本滞在中に見聞した様々な日本の情景が記録された一冊。
その視線は、
(前略)
物事に本気で没頭する観察者として、客観的な判断
(後略)
(本書2ページ 「まえがき」より)
という科学者としてのそれに他ならない。
この本によって、当時の日本人たちが、まだまだ遅れていた日本を、一刻も早く西欧と肩を並べる国にすべく、懸命に突き進んでいた事が見えてくる。
日本人としての誇りとプライドを持って、しかも、謙虚に教えを乞う。
この気概を持った真摯な情熱こそ、驕り高ぶってしまった現代の日本人たちが忘れてしまった物に他ならない。
当時の日本、そして日本人を知る事の意義をあらためて再認識させられる一冊である。
- ハンス・モーリッシュ, 瀬野 文教
- 植物学者モーリッシュの大正ニッポン観察記