トランプ大統領演説、市場が注目の5つポイント
市場はドナルド・トランプ米大統領の初の議会演説にほとんど反応しなかった。世界の株式、債券、為替市場で最近材料となってきた経済・貿易計画についての詳細がほぼなかったことが大きな要因だ。「予想通り美辞麗句が並んだが中身に欠けた」(ナショナル・オーストラリア銀行通貨戦略部門グローバルヘッド、レイ・アトリル氏)との声もある。市場が注目していた5つの分野と、演説で明らかにならなかった点を以下にまとめる。
1.インフラ支出
トランプ氏は演説で「国を再建する新しいプログラムを作る時が来た」と述べ、インフラに1兆ドル(約113兆円)を投じると改めて約束した。巨額の刺激策への期待で米株式相場は今年に入り押し上げられたが、演説では新たな内容がほとんど示されなかった。
2.税制
株式相場の上昇を支えてきたもう一つの要因が、法人税引き下げなど税制改革への期待だった。トランプ氏は自身の経済チームが、法人税を引き下げる「歴史的な税制改革」に向け作業を進めていると述べたが、やはり具体的な内容や時期についての詳細を明らかにしなかった。下院共和党が提案する「国境調整税」には最近、反対意見も出ている。
3.貿易
他国の貿易慣行は大統領選中に好んで取り上げてきたテーマで、トランプ氏は不公平だと指摘してきた。演説でも触れたが、関税の引き上げや特定の事例で強硬姿勢をとるなどの具体策には一切言及しなかった。中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してから米国は6万もの工場を失ったと述べたが、中国に触れたのはこの一度だけで、メキシコの名前は全く挙げなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は演説に先立ち、トランプ政権が米国におけるWTOの影響力を弱め、米国法を擁護する通商政策を立案していると報じた。関税に関する具体案の欠如は、保護主義的な発言がそのまま行動につながらないとの見方を導き、新興国株式市場に資金を振り向けてきた投資家を元気づける可能性がある。
4.為替
新政権は貿易上のメリットを狙って自国通貨を低水準に抑えているとして中国、日本、ドイツを非難しているが、演説では貿易相手国の為替政策を取り上げなかった。トランプ氏は先週自らロイター通信に対し、中国は為替操作の「偉大な勝者だ」と語った。選挙運動中は「就任初日に」中国を為替操作国に指定すると約束していたが、スティーブン・ムニューシン財務長官はインタビューで、4月に貿易相手国の為替政策を見直す慣例に従うことを示唆している。
5.予算
演説でトランプ氏は、3月半ばに公表予定の予算案で「米国史上最大級となる国防費の増額を求める」意向を示した。だがこれはすでに分かっていたことで、問題はその財源をどう捻出するかだ。WSJの報道によるとトランプ氏は国務省と米国際開発局(USAID)の予算削減で賄うことを提案する可能性もあるが、この案には共和・民主両党が反対している。
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