イギリス、移民減らせば日本と同じ道
英国には移民が多すぎる。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の熱心な支持者の多くはそう言っている。EUとの離脱協議で移民について強気の交渉を進めると話すテリーザ・メイ首相も同じだ。だが、英国が経済成長を維持するには移民が必要だとする新たな調査リポートを読めば考え直すかもしれない。
人材コンサルタント会社マーサーの試算によると、英国生まれの労働者の人口は2013年にピークに達した。移民がいなければ、同国の労働力は既に縮小しているだろう。そうなれば、少なくとも1850年代以降で初めて、人口全体の増加ペースが労働者の増加ペースを上回ることになる。
そうした背景に照らして、リポートの執筆者は考えられる移民政策をいくつか検討している。そのうち最も寛大なシナリオでは、現在は年間30万人超の移民純流入数が2020年以降は18万5000人と、政府の予想に沿った流れをたどる。これにより2030年には、労働力が現在の水準を170万人(5%)上回る。この間、全体の人口は8%増加する見通し。
人口動態や経済状況は、一部ブレグジット支持者が掲げる制限主義的な目標に近づくほど悪化する。移民純流入数がメイ首相の約束通り年間10万人に減った場合、2030年までの人口増加率7%に対し、労働力の伸びは3%にとどまるだろう。他のEU諸国出身者が英国から脱出するなどして移民の流出が流入を上回る極端なケースでは、現在より70万人少ない労働人口が、230万人多い人口を支えることになる。
移民を制限すれば技能労働者の不足が増幅する。制限主義者に言わせると、移民が現在従事している仕事は英国人にもできる。ここで問題になるのが、それを埋めるのに十分な英国人がいないであろうことだ。子育てなどのために数年仕事から離れたい母親など、英国生まれの成人をより多く労働力に取り込むことは一段と難しくなりそうだからだ。求人を、特にほどほどの賃金で、埋めるのに腐心する雇用主は増えている。その結果、オートメーションへの依存度が高まったり、国外への事業移転が活発化したりしそうだ。
厳しい移民制限は、財政均衡で苦戦する英政府の課題も深刻化させるだろう。マーサーが想定した中で最も寛大な移民政策の下では、労働者1000人が支える高齢者の数は、現在の277人から346人に増える。移民が純流出となるケースでは372人に増加する。
メイ首相と同僚は、移民が英国の価値観や治安と矛盾しないことを有権者に請け負う必要がある。だがマーサーのリポートはあらためて気づかせてくれる——英国は移民がいたほうがうまくいく。でなければ、移民を恐れるもう一つの島国であるかつての経済大国、日本に影を落とす停滞の道をたどる。
人材コンサルタント会社マーサーの試算によると、英国生まれの労働者の人口は2013年にピークに達した。移民がいなければ、同国の労働力は既に縮小しているだろう。そうなれば、少なくとも1850年代以降で初めて、人口全体の増加ペースが労働者の増加ペースを上回ることになる。
そうした背景に照らして、リポートの執筆者は考えられる移民政策をいくつか検討している。そのうち最も寛大なシナリオでは、現在は年間30万人超の移民純流入数が2020年以降は18万5000人と、政府の予想に沿った流れをたどる。これにより2030年には、労働力が現在の水準を170万人(5%)上回る。この間、全体の人口は8%増加する見通し。
人口動態や経済状況は、一部ブレグジット支持者が掲げる制限主義的な目標に近づくほど悪化する。移民純流入数がメイ首相の約束通り年間10万人に減った場合、2030年までの人口増加率7%に対し、労働力の伸びは3%にとどまるだろう。他のEU諸国出身者が英国から脱出するなどして移民の流出が流入を上回る極端なケースでは、現在より70万人少ない労働人口が、230万人多い人口を支えることになる。
移民を制限すれば技能労働者の不足が増幅する。制限主義者に言わせると、移民が現在従事している仕事は英国人にもできる。ここで問題になるのが、それを埋めるのに十分な英国人がいないであろうことだ。子育てなどのために数年仕事から離れたい母親など、英国生まれの成人をより多く労働力に取り込むことは一段と難しくなりそうだからだ。求人を、特にほどほどの賃金で、埋めるのに腐心する雇用主は増えている。その結果、オートメーションへの依存度が高まったり、国外への事業移転が活発化したりしそうだ。
厳しい移民制限は、財政均衡で苦戦する英政府の課題も深刻化させるだろう。マーサーが想定した中で最も寛大な移民政策の下では、労働者1000人が支える高齢者の数は、現在の277人から346人に増える。移民が純流出となるケースでは372人に増加する。
メイ首相と同僚は、移民が英国の価値観や治安と矛盾しないことを有権者に請け負う必要がある。だがマーサーのリポートはあらためて気づかせてくれる——英国は移民がいたほうがうまくいく。でなければ、移民を恐れるもう一つの島国であるかつての経済大国、日本に影を落とす停滞の道をたどる。