ウォール街はトランプ氏による規制緩和の夢を見るか | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

ウォール街はトランプ氏による規制緩和の夢を見るか

ドナルド・トランプ米大統領の金融政策課題は、規制緩和という面だけでなく、議会の承認を得ずに物事を進める決意を明らかにしているという点でも大胆だ。

トランプ政権が3日に金融規制緩和計画の概要を示した後、金融株に投資している向きは株価を大きく押し上げてこれを祝った。しかし、同政権が融資と雇用創出を促進するという公約をどの程度達成できるかは不明だ。法律の制定が伴わない場合はなおさらだ。

トランプ氏は3日、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の縮小に向けた枠組みを作る大統領令に署名した。また、オバマ政権が制定した、小口投資家の保護を目的とした退職貯蓄の受託者責任ルールの導入を延期、そしておそらく廃止に乗り出している。

金融大手ゴールドマン・サックス・グループの元社長で国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーン氏が説明したように、この規制緩和計画はひと目見ただけでウォール街の夢のように思える。
 
金融危機後に制定された規則の多くは規制当局の自由裁量に任されている。トランプ政権はこうした規則の施行方法を見直す計画で、銀行の自己勘定取引を禁止するボルカー・ルールも含まれているほか、消費者金融保護局の人事異動もあり得る。

自己資本要件も一部緩和されるかもしれない。この分野のトランプ政権の裁量権は国際協定によって制限されるが、コーン氏は「自己資本については、(米国の銀行が)欧州の銀行のずっと先に行っている」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

自己資本要件が大幅に見直されなかったら、行動計画の多くは、トランプ氏が中心的課題と言う銀行融資にせいぜいわずかな効果しかもたらさないだろう。

確かに融資活動は金融危機後の数年間、弱まったが、景気回復に加え、銀行が自己資本を積み増し、新規則に適応したことで、銀行融資は再び加速している。

米連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、米銀による融資・リースはこの3年間、年平均6.9%のペースで増加した。2000〜07年では7.9%だったが、この数字は金融の安定を維持するには高過ぎた。

ワシントンの民主党と共和党の間では、中小規模の銀行が規制によって過度な負担を負っているため、小規模企業に融資が行き渡っていないとの見方が大勢だ。だが、トランプ政権がこの問題にどのように対処するかは分からない。幅広い支持が得られそうな措置の1つは、FRBの年次ストレステスト(健全性審査)の対象となる銀行の総資産基準の引き上げだ。現在は500億ドルで、おそらくシステム上重要ではない数多くの中堅銀行が対象となっている。

しかし、それには法律制定が必要で、トランプ氏の一方的な行動に議会がどのように対応するかは不明だ。独自の改革案を策定している共和党は、脇に追いやられることを快く思わないかもしれない。また、上院で議事進行を妨害できる民主党は、闘争的な態度をとることを一段と迫られる可能性がある。

ただ、トランプ政権にはもともと、特にウォール街の大企業のために規制を大幅に緩和できる力がある。大統領選以降、大きな勝ち組の1つとなっている金融株は上値を伸ばす新たな燃料を得たのだ。