ドラギECB総裁の記者会見、5つのポイント | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

ドラギECB総裁の記者会見、5つのポイント

欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が今年初めての記者会見で認めたように、ここ数週間に発表されたユーロ圏の経済指標はどれも堅調だった。だが総裁は、長らく景気低迷にあえいできたユーロ圏にとって状況は改善しつつあるように見えるものの、インフレ率を目標まで押し上げてその水準に維持するためのECBの闘いはこの先もまだまだ続くと繰り返し強調した。以下に会見の五つのポイントを挙げる。

 

1.一時的な物価上昇は「取り合わない」
2016年12月のユーロ圏総合消費者物価指数(HICP)は前年同月比1.1%上昇した。伸び率は約3年ぶりの高水準となり、中銀が目標とする2%弱に近づいた。だが総裁は、緩和策を縮小するのは時期尚早と考えており、主に燃料の値上がりに起因する一時的なものと判断される物価上昇については「取り合わない(look through)」ことで政策担当者らは意見が一致したと述べた。

 

2.高いハードル
ECBの厳格な基準で見た場合、何をもってインフレ率が上昇したと判断するのか。その定義について、総裁はここ数回の会見よりもさらにハードルを上げた。条件としては、インフレが中期的に持続可能で、しかもそれが域内中核国だけでなくユーロ圏全体に広がっていること。そして、ECBが緩和策を解消してもインフレが続く可能性が高いことだ。

 

3.ドイツへの配慮
債券買い入れ策を17年末まで延長するという16年12月政策理事会での決定をドイツが強く批判したことを受け、総裁と広報チームがドイツを意識して今回の会見内容を練り上げたのは明らかだ。総裁はドイツの預金者や投資家などに対し、将来において確実に高い金利を実現するためにはいま金利を低くしておくしかないのだから辛抱してほしいと訴えた。また、ドイツの借り手や起業家、労働者は低金利の恩恵を受けてきたと指摘し、ユーロ圏全体の景気が回復すればドイツにもプラスになると強く主張した。

 

4.トランプ氏
ドナルド・トランプ次期米大統領が欧州連合(EU)離脱国は増えると発言したことやドル高に警告を発したことについて、総裁は2回にわたり意見を求められたが、トランプ氏の政策を評価するのはまだ早過ぎるとしてコメントを差し控えた。

 

5.ブレグジット
英国のEU離脱についても総裁は多くを語らなかった。だが、この質問を回避したせいでドイツに対するメッセージの説得力が薄れてしまった可能性もある。