日本の総合商社は資源メジャー!? | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

日本の総合商社は資源メジャー!?

日本の商社は、利益に占めるエネルギー・資源の割合が、例えば三菱商事は70%、三井物産は77%、伊藤忠68、双日63%と高いことから資源会社というイメージで見られます。実際に海外の投資家が投資先として日本の商社を考える際は、そのROEEPS等の比較対象は資源メジャーを使うのが海外では一般的なようです。

三菱商事は、1999年度の純利益はわずか56億円でしたが、2011年度には過去最高の4631億円を稼ぎ、今年度も過去最高を更新する見通しです。収益増の背景に資源高があるのは言うまでもありません。と言うのも三菱商事の事業ポートフォリオに占める資源の割合は70%近くあります。このうち原油のウェートは4割強で、他に鉄鉱石や銅など鉱物資源が挙げられます。

三菱商事と並ぶ日本の総合商社である三井物産も事業ポートフォリオは概ね三菱商事と似ており特徴をあげるなら三井物産の方がロシヤや中央アジア地域での天然ガス開発の占めるウェートが三菱商事より大きいと言えるでしょう。

一方で、海外の投資家にとって、資源メジャーと比較するような会社が商社なのか?といった疑問を持つため、日本の総合商社は最も理解が難しく、利益ベースでみれば資源が主体の会社と言えるが、事業ポートフォリオからは「なぜこんな事業を持っているんだ」と頭を抱えてしまうようなものが有り、結局のところ何を生業にしているのか分からない「正体不明」の企業だとも言われます。これは日本国内でも多くの人が商社に対して持っているイメージでもあるような気がします。

近年では三井物産は女子刑務所で就労支援サービスを提供したり、伊藤忠商事や三菱商事はテレビショッピングでヒット商品を生み出し、丸紅は世界一のカバン生産量を誇るブランド「レスポートサック」通報レスポの世界展開を取り仕切り、三井物産や丸紅はキャラクターの商標権を持ち、映画配給会社を支配するなど、これらはすべて総合商社が手掛ける事業の一部です。

また、伊藤忠が開発事業に参画する南アのプラチナ鉱山は世界最大規模、丸紅のIPP(卸売り電力)事業の発電容量は北陸電力のそれを上回り、三井物産は化学最大手のダウ・ケミカルと組んでブラジルで東京23区の総面積を超える農場を運営し世界最大級のバイオ化学品合弁事業を展開するなど、巨大プロジェクトに必ずと言っていいほど顔出すのも総合商社の特徴です。ちなみに、欧米のメジャーと違いを出し自分たちが搾取者ではなくビジネスとして共存共栄を図る事を目的としている事を訴えるための徹底した現地に溶け込み営業の末、現地の有力者に推されてアフリカの部族の王様になった商社マンもいるそうです。 

本来の商社は、モノを右から左に動かして手数料を稼ぐ仲介業を生業にしていましたが、メーカーによる直接取引の増加で、収益機会を徐々に失い、80年代後半から「商社不要論」が言われていました。また80年代のそうした不要論に対応するため金融、特にファイナンス業務に進出を試みましたが、高度成長の波に乗り、金融の雄である野村証券が大規模な海外展開を図った時期と重なり、彼らのビジネス、特に欧米先進国市場をほとんど野村證券始め日系の金融機関に奪われてしまいました。その商社も今は復活し、昔の口銭ビジネスは「バリューチェーン」という形に進化を遂げています。

例えば、クリスマスシーズンに入るこれから、クリスマスのCMなどでも目にする機会が増える日本ケンタッキーフライドチキン。ケンタッキーフライドチキンは鶏肉を卸しているのはフードリンクという企業で、養鶏と精肉を担当するのがフレッシュキッチンと米インディアナ・パッカーズ、それらに配合飼料を販売しているのが日本農産工業で、米で穀物の集荷を行っているのが米アグレックスと豪リベリナです。

飼料の調達から養鶏、フライドチキンになるまでざっと見渡せば上記のような企業が登場します。三菱商事がケンタッキーフライドチキン日本法人に65%弱出資していますが、ケンタッキーフライドチキン日本法人以外で先程列挙した企業には、すべて三菱商事が100%か限りなくそれに近い比率で出資を行っています。つまり、川上から川下までの全行程に商社が関わっています。各事業会社の利益率は低くても、確実に利益を上げることで、黒子役の商社が配当と持ち分利益を得るのが「バリューチェーン」の構図です。


ケンタッキーに見るバリューチェーンはあくまで一例に過ぎませんが、商社の活動範囲は川上から川下、衣食住からミサイル兵器まで想像以上の領域に及び、商社は様々な事業に投資する投資会社であるという理解が日本の総合商社を理解する上で最も的を射ているように思います。

Ken