上海で地下鉄追突事故
軌道の総延長「世界最長」(420KM)を誇る地下鉄で追突事故が発生した。昨日(27日)午後2時51
分、上海市中心部を走る地下鉄10号線の豫園駅と老西門駅の間で列車同士が衝突し、271人が負傷
した。このうち2人は日本人の男性と女性で、いずれも軽傷。この路線では、事故の40分前に別の駅で
信号システムの故障があり、手動による信号操作に切り替えて減速運転を行っていたという。現場近く
には上海有数の観光地、明代の庭園「豫園」があり、日本人観光客も多い。
事故発生から約5時間で運転を再開し、翌28日には運休が決められた。安全性を確認するための運
休であることは明らかだが、ならば事故当日の運転再開は「安全性をきちんと確認していたのか」という
疑問が必然的に出てくる。事故発生した10号線は上海万博に合わせて昨年4月に開通し、信号設備
は、高速鉄道事故の発生区間と同様の信号系統を採用していた(合弁会社カスコ信号)。事故発生の
発端は信号システムの故障で、専用電話で連絡することにより同一区間内に複数の電車が進入しない
ようにする「電話閉塞(へいそく)方式」で徐行運転をしていたところ、ミスによる追突事故が発生したとさ
れている。
この追突事故に関して、上海市が同日夜記者会見を開き、地下鉄運営会社のトップ、上海地下鉄運
営会社である上海申通集団の兪光耀総裁が頭を下げて謝罪し、事故の発生状況や応急措置、乗客の
避難状況などを説明した。しかし、事故直後約5時間で運転再開などの対応は、安全の確報がきちんと
できているのかと、当局への疑問の声があふれている。安全性より成長速度を優先する「中国モデル」
の危うさを改めて露呈した。
Robin