チャイナ・リスクと向き合う~米系ファンドも犠牲続出
チャイナ・リスクと向き合う
米系ファンドも犠牲続出
最初は、今年の2月に発覚した、2009年上場のChina Forestry(チャイナ・フォレストリー)の粉飾決算等の疑惑です。同社は監査法人であるKPMGが2010年度の決算に疑問を呈した後、同社のCEOが株式を売却していたことが発覚し、同社の株価は2割以上急落した後、売買停止となりました。
この事件が大きな注目を集めたのは、同社が、プライベートエクイティファンド最大手の一つであるカーライルグループが、大株主となっていたためです。カーライルと言えば、早くから中国に特化した人民元建てのファンドを設立する動きを見せるなど、近年は欧米バイアウトファンドの中でも中国通と言ったイメージがあったファンドです。同ファンドの中国政府とのコネクションの強さも、広く知られるところです。それほどの一流ファンドでも避けられなかった、中国企業のコーポレートガバナンスの問題の根深さに、欧米投資家の中国株への懐疑心は、一気に高まったと言える気がします。
最近では、5月にアメリカに上場しているソフトウェア会社Longtop Financial(ロングトップ・フィナンシャル)に、粉飾決算の疑いが噴出しました。5月26日のNY Timesの記事によると、この問題は、ロングトップの監査法人を6年連続で勤めていたDeloitte Touche Tohmatsuからの報告書で発覚し、1ヵ月半で株価が4割下落したところで、同社の株は売買停止になりました。
同社は、ドイツ銀行とゴールドマンサックスという欧米の大手投資銀行二社が2007年に上場主幹事を勤め、2009年にはドイツ銀行とモルガンスタンレー証券が主幹事となって追加株式資本調達を行っていました。売買停止前の時価総額も$1bn(約800億円)に上り、一見普通の中堅優良企業のように見えます。大手監査法人や投資銀行と取引があり、大株主にブラックロックやフィデリティなど米国の名だたる投資信託やヘッジファンドが入っていた同社の粉飾決算の問題は、大変注目を集めました。
それに追い討ちをかけるように、6月に入って、1994年設立の民間企業で、中国で林業を営むカナダ上場のSino-Forest(サイノ・フォレスト)に粉飾決算の疑いがある、との噂が広まりました。同社の大株主は、2008年のリーマン危機で大きな儲けをあげ一躍有名になった、世界最大級のヘッジファンドPaulson & Coで、そんなプロのヘッジファンドでも中国企業のコーポレートガバナンス問題は見抜けないのかと、恐怖心を一層煽る結果になったと言える気がします。
もちろん、LongtopやSino-Forestの投資家がいかに大手の投資信託やヘッジファンドであったとは言え、リサーチを行う際の情報量や、その分析に費やせる時間には、限りがあります。投資の現場では、リスクが皆無という投資先は基本的に存在しませんので、常に「リスク対リワード」を検討し効率的判断を行うことが求められます。
つまり一部の報道で見られたように、それらのファンドの投資調査を「手抜き」と非難するのは、少々アンフェアである気がしますが、とは言え金銭的にはかなりの打撃になってしまったことには間違いない気がします。そうなってくると、「そんな良く分からない海外の市場に投資しなくても良いのではないか」という空気が蔓延してきます。先に述べたハンセン指数の低い株価倍率は、そんなことも反映しているのかもしれません。
Ken
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