元気な新興国ブラジルとインド~ブラジルの政策金利は12%へ
4連続コラム、今週は目覚ましい発展を遂げるブラジルとインドについて取り上げたいと思います。今日と明日
はブラジル、水曜日と木曜日はインドの今を取り上げたいと思います。本日はブラジルの政策金利を中心に書き
ます。
ブラジル中銀は、4 月19 日(火)・20 日(水)に開催された金融政策委員会(COPOM)で、政策金利(Selic)
を0.25%引き上げ12.00%とすることを決定しました。利上げの実施は市場予想通りでしたが、利上げ幅の市
場での予想は0.25%と0.50%とに分かれていました。中銀は今年1 月に半年振りに利上げを再開、その後3
月にも追加利上げを実施し、政策金利を各々0.5%引き上げており、今回は利上げ幅を0.25%に縮小させました。
これで今年3 回目の利上げとなります。
中銀は、金融政策委員会の声明で、「金融政策の調整プロセスに従い、政策金利(Selic)を12.00%へ引き
上げることを決定しました。5 名は0.25%、2 名は0.50%の利上げを支持。現時点では、インフレ・リスクの均衡、
依然不透明な国内景気の減速度合い、そして国際環境の複雑さを考慮すると、十分に長い期間をかけて、金
融政策の調整を行うことが、2012 年にインフレ率を目標値(中央値は+4.50%)に収斂させるための最も適切
な戦略と考える。」と述べています。
この声明内容は、政策金利がさらに引き上げられることを示唆するものと見られます。インフレ率が加速、
景気は減速しつつも現状維持を目的としています。今回の利上げの背景としては、インフレ率がなお実績値、
期待値ともに上昇していること、また景気が減速しつつも依然堅調を維持していること、が挙げられます。
20 日(水)に発表された4 月のIPCA-15(月半ばまでの1 ヶ月間の拡大消費者物価指数)は、前月比で
3 月の+0.60%から+0.77%へと加速しました。内訳を見ると、食料・飲料が+0.79%、衣料が+1.46%、交通
費が+1.45%と上昇し、指数全体を押し上げています。また、IPCA-15 の前年同月比は、3 月の+6.13%から
4 月は+6.44%と上昇し、中銀目標レンジ(4.5%±2.0%)上限に接近しました。
さらに、市場の予想インフレ率(IPCA)も上昇傾向が続いています。4 月15 日時点の中銀調査によると、
市場関係者の2011 年のIPCA 上昇率の予想は、4 週間前の+5.88%、1 週間前の+6.26%から+6.29%、
2012 年の予想も4 週間前の+4.80%から1 週間前及び15 日時点は+5.00%へと上昇しています。
私は、①国際商品市況が上昇基調にあること、②景気が依然として潜在成長率(私は+4.50%と
推測)を上回るペースで拡大していること、③労働需給が逼迫しておりサービス価格の上昇圧力が続く見込み
であること、などからインフレ率は引き続き高水準で推移するものと予想しています。私は、4 月末時点の
IPCA 上昇率は、前年同月比で中銀目標レンジ上限の+6.50%を超え、再びこの水準を下回るのは本年後半
になると予想しています。
一方、景気は内需主導で引き続き堅調を維持しています。直近の景気指標を見ると、2 月の鉱工業生産指
数は前月比で1 月の+0.2%から+1.9%、前年同月比では+2.4%から+6.9%となりました。また、2 月の小
売売上高は前月比で1 月の+1.1%から-0.4%となりましたが、前年同月比では+8.3%から+8.2%と高い
伸びが続いています。2 月の経済活動指数(GDP(国内総生産)成長率の目安として注目される中銀が発表す
る景気指標)は、前月比で1 月の+0.7%から+0.3%、前年同月比では+5.1%から+7.0%となり、第1 四半
期も景気は堅調に推移していることを示しています。さらに、労働市場は依然逼迫しており、3 月の失業率は
前月の6.4%、前年同月の7.6%に対し6.5%となり、市場予想の6.7%を下回りました。3 月としては、現行統
計が開始された2002 年3 月以来最低となります。また、3 月の平均実質賃金は前月比+0.5%、前年同月比
+3.8%と堅調な伸びとなりました。
私は、ブラジル経済はソフトランディングに向かいつつあると見ており、実質GDP(国内総生産)成長率
は、2010 年の+7.5%から2011 年は+4.7%になると予想しています。良好な雇用情勢を背景に、個人消費
は引き続き景気をけん引するものと見込まれます。また、ジルマ政権は、大型インフラ投資計画「PAC(成長
促進プログラム)」の第二弾「PAC2」を強力に推進しており、インフラ投資も成長のけん引役となることが見込
まれます。
Ken