金価格を考える~需要面
4連続コラム、3日目の本日は需要面を考えてみたいと思います。ファブリケーション(金細工)需要は2009年から2010年にかけて+10.7%成長し、2779トンになりました。金価格が上昇したにもかかわらずファブリケーション需要が増えた点は過去のパターンとは少し違います。ファブリケーションを増やしたのはインドです。
普通、インドの金細工業者は金価格が安いときに素材の仕入れを増やし、金価格が高騰した局面では買付を絞り込む傾向があります。これは高値でゴールドを仕込んで、結果としてマージンを圧迫するリスクを回避するためです。
しかし2009年から2010年にかけては金価格がずっと高かったので、いつまでも買付を後回しにすることが出来なくなり、金価格は今後も高止まりするとの判断のもとにファブリケーション向けの買い付けを再開したものと想像されます。
産金会社の「売りつなぎ」によるヘッジ残高は僅か151トンまで下がってきました。ピーク(2000年頃)には年間3000トンもの売りつなぎがなされていました。(これは産金会社によるヘッジポジション解消のための「買い戻し」需要が減退することを意味します。)
世界の政府はこれまで金による準備を取り崩してきました。しかし中国などの新興国はいまどんどん外貨準備が増えており、しかもその内容はドル資産に極端に偏っています。このため準備の内訳をユーロや金に分散投資する一環で政府による金買付の圧力が今後働くと予想されます。
最後に世界の金の実物資産(延べ棒、コイン)への投資は重量ベースでは-10%の1675トンでした。しかし金額ベースでは660億ドルと過去最高を記録しました。
Ken