中東情勢を歴史から見た分析~「今回の反政府デモ」
月曜日から木曜日までの連続コラムの最終日である本日は、3日間のコラムを踏まえて現
在の中東情勢を考えてみたいと思います。
今回の反政府デモは過去の中東史の独立運動や列強からの経済的権益の奪還、精神や文化
面での宗教運動でもありません。ある意味ではそれらは既に達成しているためです。今回
の運動の矛先はそれぞれの国の為政者に対して向けられています。もともと現在の中東の
為政者たちの大半は列強によって選ばれ、便宜的に据えられたリーダーであるか、エジプ
トやリビアのようにクーデターで獲得した地位です。世界経済の中で欧米のプレゼンスが
全般的に低下する中で、中東の為政者達は石油権益の国有化と歴史の顛末の中で、その地
位が固定され、一種の貴族化をしています。この閉塞感が民主主義への渇望と共鳴し、今
回の原動力となっているため、これまでの中東の歴史に無い新たな動きであり、それが今
回中東で立て続けに起こっている民衆蜂起が注目されているゆえんと言えるでしょう。
ちなみに、バーレーンの場合は様相が異なる可能性が高いです。この国の為政者はイスラ
ム教スンニ派であるのに対して、国民の大多数はシーア派です。これは中東の文脈で考え
るとスンニ派が多数のサウジアラビアとシーア派のイランによる代理戦争とも言えます。
またサウジの背後には米国があり、米国にとってもバーレーンには別の戦略的な意味があ
ります。同国はホルムズ海峡という世界の原油の20%強の供給ルートの要所に近く米海軍
第五艦隊の基地があるためです。ホルムズ海峡の効果を最大限活用しプレゼンスを示すイ
ランに対抗するための米国外交の戦略的要がバーレーンです。つまり、バーレーンの騒乱
は米国・サウジ・イランなどの諜報員達がそれぞれの利害のために同国の国民や政府を扇
動している可能性が考えられ、これが事実ならば、バーレーンの騒乱は前近代的ですが中
東らしい内紛ともいえますし、エジプトの時と異なり、米国政府、特にヒラリークリントンの歯切
れが極端に悪くなる理由が明らかになると思います。
Ken