六本木ヒルズvs東京ミッドタウン、から見た東京再開発 真の敵は丸の内!?
先週の日曜日、東京は天気に恵まれたため、普段は自宅近辺で軽めのジョギングをするのが私の普段の日曜日の過ごし方ですが、その日は気分転換で御茶ノ水から神田・日本橋・大手町・日比谷・霞が関・溜池山王・六本木・青山通り、赤坂見附・大手町、というコースを走りました。時間帯が休日の朝八時ということもあって、人や車の交通量も少なく、とても快適なコースです。途中、檜町公園でストレッチを兼ねた休憩をしていて、改めて東京ミッドタウンの大きさに驚きつつも、ヒルズやミッドタウンとそこから少し離れた六本木の町が醸し出す空気が、まるで異なることに気付きました。そこで、今回は六本木ヒルズを作った“森ビル”と東京ミッドタウンを作った“三井不動産”を切り口に東京再開発の現状をお伝えしていきます。六本木ヒルズと東京ミッドタウン、両者は複合大型施設という意味で共通していますが、開発ヒストリーは全く異なります。
六本木ヒルズは私が学生時代に読んだ、森ビルに関する著書「森ビル・森トラスト 連戦連勝の経営」で記載されていますが、約400人もの民間地権者の利害を調整する市街地再開発事業で地権者一人ずつを訪問し開発に合意してもらうために説得して回り、竣工までに17年の歳月を要したそうです。実は、森ビルは来年開業25周年を迎えるアークヒルズの開発にも20年近くの歳月をかけております。一方の東京ミッドタウンは三井不動産を中心とした企業連合(コンソーシアム)が旧防衛庁跡地(国有地)を落札してから竣工までに5年程度しかかかっていません。その意味で森ビルは、都心部での大規模再開発事業では第一人者といえる存在です。事業の具体像がまったく不透明な中で、長期にわたって自らの資金と人材を投じていく事業スタイルは、森ビルのような非公開企業でしか取り組めないもので、三井不動産や三菱地所など公開不動産会社とは不動産セクターという意味では同じでも、全く異なるビジネスモデルといえるでしょう。公開不動産会社の場合、期間が長くなればなるほど、借入金の金利が株価にボディブローのように効いてくるため、昨今のように株の持ち合い関係が薄まりつつある状況下では、森ビルのビジネスモデルを真似するのは非常に難しいように思えます。
ミッドタウンの敷地面積はヒルズより僅かに小さい10㌶ですが、このような大規模な街づくりをプロデュースする経験は三井不動産としても初めてで、先行して開発された六本木ヒルズは偉大であると同時に、格好のお手本だったといえるでしょう。(森ビルにはアークヒルズ建設運営の経験があり、その時の経験がすべて六本木ヒルズに活かされている、とコメントしています。)ミッドタウンはヒルズより六本木らしさの強い地域に立地していますが、厳密には赤坂9丁目が実際の住所のため、実際の住所にこだわったためか、あるいはヒルズへの対抗心なのか、プロジェクト名では「六本木」という地名を避けていました(ちなみに六本木ヒルズの建設プロジェクトは「66計画」と呼ばれていたそうです。“66”とは、“六本木6丁目”の事だそうです。)。しかし、「M」をデザインしたミッドタウンのロゴマークをみると、これはヒルズ(森ビルのロゴも「M」)を強く意識しているように思えてなりません。
「六本木ヒルズ=ヒルズ族」という言葉が流行し、その評価をやや落とし、近年の金融恐慌で入居していた外資系金融機関などが撤退するなど厳しい状況におかれた感のあるヒルズでしたが、ミッドタウンという好敵手の存在(ミッドタウンサイドから見てもヒルズは良きライバルと言えるでしょう)、また近年急成長しているグリーなどの新興のネット企業の力でパワーを取り戻しつつあるようです。ヒルズもミッドタウンも、その超高層オフィスタワーは、東京23区内に2万棟以上ある賃貸オフィスビルの頂点に位置するトップクラスのビルであり、さらに住宅・商業・ホテル・文化を融合した巨大プロジェクトとしても他に例を見ません。ヒルズとミッドタウンの闘いは、六本木という土俵で、出身も得意技も異なるライバルがガッブリ四つに組む横綱相撲をしている状況で、大いに関心を呼ぶところです。
ただ、ライバル対決という側面だけでなく、このような大規模プロジェクトが地域経済・社会にどのような影響を及ぼすのかという視点も重要な視点と思います。つまり、六本木エリアにおけるヒルズ・ミッドタウン効果です。ミッドタウンの近くには国立新美術館が存在し、六本木ヒルズは森アーツアカデミーを、ミッドタウンはサントリー美術館を有しております。「文化都市を創出する・コンパクトシティを作る」ヒルズと、「デザインをテーマに、日本の新しい価値と感性を世界に発信する」ミッドタウンが切磋琢磨することで、六本木エリアは、これまでの無国籍で猥雑な部分を残しつつも、先端的で文化的なイメージの街に変化していく可能性を秘めた町と言えるでしょう。
その意味で、ヒルズとミッドタウンの真のライバルは、三菱地所の牙城、丸の内エリアの超高層ビル群であると言えるでしょう。たとえば、六本木ヒルズに先行すること約半年、東京駅前にオープンした丸ビルは、ビジネス一色で華のなかった丸の内を賑わいのある商業エリアに変えるシンボルとなりましたし、2009年にオープンした新丸ビルも大きな話題になりました。丸の内エリアに立地するビルの強みは、業務・商業・宿泊などの都市機能をプロジェクト単位ではなく、エリア全体として整備し、街全体の情報発信力やブランドを高めていこうという事業戦略を持つプロデューサー、三菱地所の存在です(三菱地所は別名「丸の内の不動産屋さん」と呼ばれています)。これは、個々のプロジェクトの中で、業務・商業・宿泊・住宅・文化・公園まで整備してコンパクトな街を創り上げているヒルズやミッドタウンとの大きな違いです。ビジネス街だった丸の内エリアには、すでにレストランやブランドショップも多数集積しており、海外の高級ホテルも開業しており、皇居という広大な公園緑地にも隣接していることから、ここに無いものは住宅だけといえるでしょう。
ビルの建て替えや機能の更新によって大手町・丸の内・有楽町地域のブランド力をさらに高めようとしている三菱地所に対して、港区を中心に市街地再開発プロジェクトを推進する森ビルは国内では六本木地区を中心に展開し、海外では中国上海で上海ヒルズを運営し海外進出を遂げております。一方、三井不動産は、東京駅八重洲口のグラントウキョウを筆頭に、六本木、丸の内両エリアに最新鋭の超高層ビルを保有しており、お膝元日本橋三井タワーを起点に室町・日本橋・銀座を経て汐留に至る中央通周辺の業務・商業開発を積極的に進めるなど、両者とはまた異なる路線を歩んでおります。いずれにしても、日本を代表する大手不動産会社3社が三つ巴になって東京の街づくりを競う戦場、港区・中央区・千代田区の動向は注目です。
Ken
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