不可侵のArcadia第二弾。今回は牡牛座。
スッキリしない終わり方をしてる。これからもアトラスとこの一般人の女の子は出口のない関係を堂々巡りしていくんだと思います。
男密度100%の星座で本編では色恋沙汰皆無だけど、こいつらもちゃんとやってるんだぜアピールです。
Life is a junk game
―――自分が彼の、都合の良い女ポジションに付いていることは自覚している。
彼...黄道十二宮という非合法な組織。牡牛のアトラスの名を賜った男。
あの愛という存在を全否定したような(実際そうなのだろう)冷たい目をした男と、最初に関係を持ったのは何時だったか。
“アイツに見返りを求めるのは無駄だよって俺教えてあげたよね”
アトラスの相方だという男・エレクトラに、呆れ半分に慰められたのは、つい先日のことだ。いや、慰められたというよりは、暗にもう諦めろと言われたのかもしれない。
そう、私がいくら彼を想ったところで、彼が私を想い返してくれることはない。
こうしてずっと思いを寄せていればいつか、なんて初めは期待したものだけれど、今はこの先どれだけ待ってもアトラスがこちらを向いてくれないということを理解してしまっている。悲しい事に、理解してしまったのだ。これは事実で真実で、覆ることはないだろう。
もう、やめてしまおうか。
何度もそう思った。
それでも連絡先を、どうしても、どうしても消すことが出来ずにいる。
アトラスの特殊な職業柄、こちらから連絡することはない。だから、連絡はいつもアトラスの仕事が一段落ついた頃、向こうからある。それも、数カ月単位。遠距離恋愛とはいえ電子機器が発達したこの時代、物理的距離はあれども連絡さえマメに取れれば、最低限互いの存在を感じることは出来る。連絡自体が滅多にない関係など、遠距離恋愛どころの話ではない。
尚且つ常に受け身に回る私には、向こうがこちらに愛想を尽かしても、知る術などないのだ。いつ最後になるかが判らない関係。
もう連絡は来ないかもしれない。もう二度と会うことのない関係になってしまったのかもしれない。そう思いながら、あるかもわからない長すぎる次の連絡を、毎回待ち続ける。
アトラスは、“次”を予感させるような言葉は、一切口にしてはくれないから。
そして気まぐれに、アトラスから入る連絡に、私は毎回安堵の息を零し、無様に尻尾を振るのだ。呆れかえるくらい、莫迦な女。
彼が私に会いたがる時は、決まって彼曰く「ムナクソ悪い」仕事を終えた後。その鬱憤晴らしと相場が決まっていた。
つまり、私を求めてのことではない。
それを解っていながら、私が彼の要求に応える理由は、嬉しいからだ。
何が。
自分が、彼の逃げ込む先であることが。
本当に、私はどこまで馬鹿な女なのだろう。頭が悪すぎてほとほと自分に嫌気が差す。
...エレクトラも、きっとそう思っているに違いない。
いつも苦虫を噛み潰した様な顏で、お前は十分良くやったよと言って身を引かせようとして来るのは、彼なりの優しさなのだろう。
誰よりもアトラスを近くで観ている男だから。アトラスの半身のような男だから、きっと私よりも余計に感じているのだ。私のこの想いが、どれほどアトラスにとって無意味なものであるのかを。
アトラスの瞳は、とても空虚だ。
何も映してはいない。
孤独に飢えた獣―――なんて表現が生ぬるく感じるほど、彼の心は空っぽに思えた。
飢えすぎて、飢餓状態であることすら忘れている。そんな感じがする。
だから、そんな彼を見た時、なんとかしてあげたいと思った。
きっかけは同情だったのかもしれない。アトラスからしてみれば、迷惑な話だろう。
私が、埋めてあげられたら。そう、思ってしまったのだ。安易にも。傲慢にも。思ってしまった。
だから例え一瞬でも、アトラスが満たされる瞬間が出来るのなら。この身くらい、いくらでも差し出せた。いくらでも心を砕けた。そこに一切の感情が無くても。アトラスの瞳が私を映してくれることは無くても。
どこまでも私の自己満足で最低な感情だ。アトラスを本当の意味で救うことも満たすことも出来ないばかりか、どうして私を見てくれないのかなどと悲嘆しているのだから、世話がない。
嗚呼それでも。それでも私は、アトラスが好きなのだ。悲しいほどに、悲しい目をしたかの男のことが好きなのだ。
愛して貰えないことを知っても、離れることが出来ずにいる。私が離れてもアトラスはきっと困らない。代わりを探すだけだ。それを判っていても、愛して貰えないことを知っていても、アトラスが他の女に触れるなんて耐えられない。
このままで良いなんて思っていない。思っていないが、身動きを取ることも出来ない。
どんな形であれアトラスが私を選んでくれる事実が、どうしようもなく嬉しいのだ。
「...いっそ貴方のところに私の依頼が入ればいいのに」
ずしりと身体にかかる重みにそう呟くと、アトラスは手放しかけていた意識を無理やり引き戻したというような顔をして、私の瞳を覗き込んできた。
そうしたら、貴方に全てを終りにして貰える。この関係も、行き場のないこの想いも、全て。他でもない、アトラスの手で。
これは、私が常々思っていることだった。依頼さえ入れば、アトラスはきっと、迷わず私の息の根を止める。一切の感情の持たない瞳で、一瞬で葬ってくれるだろう。
けれど、アトラスが返してきた反応は、少しばかり予想に反していた。
「それは困るな」
ごろんと身体が反転し、アトラスが下になる。
「困る?」
思考よりも先に、口が疑問を反芻していた。
やはり、私如き庶民を殺すような程度の低い依頼では、報酬がそう入らないということだろうか。なるほど、確かに天下の十二宮が請け負う仕事にしては、スケールが小規模すぎるのかもしれない。
ひとり納得していると、アトラスの綺麗な顔が少しだけ、歪んだ。
「...何か勘違いしているようだが。お前相手の依頼が俺の元に来たら、依頼主には消えて貰わなければならなくなる」
驚愕に値する言葉だった。まさかそんな言葉が返されるなんて思ってもみなかった。薄く笑って、流されるものだとばかり思っていた。
それなのに、アトラスのその言葉が、偽りだとも思えなかった。
“アイツに見返りを求めるのは無駄だよって俺教えてあげたよね”
エレクトラの言葉が蘇る。
―――本当に?
本当に私は、アトラスに与えるばかりで、何も貰っていないのだろうか。
アトラスは確かに“愛”を返してくれた試しはないけれど、今私の心は満たされている。
酷い人。こうしてまた私を簡単に縛り付けてしまうのか。
これではいつまで経ってもアトラス離れが出来そうにない。
ただ、これはちょっとした予感だが―――次の連絡を待つのは、今までより少しだけ、苦痛ではなくなるような気がした。
アトラスが“次”を連想させる言葉を言わないのは、明日をも知れぬ我が身だから。このまま帰って来れなくても、女の子が待ち続けるようなことが無いように。
ただそれが、アトラスのエゴであることをアトラスは知らないし、エレクトラは知っている。アトラスが次を告げなくても、女の子が待っている確信がアトラスにはなくてエレクトラにはある。
アトラスと女の子はアトラスの言葉足らずが原因で心のすれ違いが半端無い。しょうもな...。
アトラスは稼業故に強気に出られないのでエレクトラは「あの子のこと守る自信がないならいい加減離してやれよ可哀想だろ。それが出来ないなら傍に置く覚悟決めろ」とかお節介をやいています。
女の子を諦めさせようとしてるのは痛々しくて見ていられないから、いっそ別の男とさっさと幸せになっちまえよとかそういう類のもの。こっちも言葉足らず。みんな言葉足らず。アホなのか。
まだ当分はこんな危うい関係から逃れることが出来なさそうな2人。
頑張れアトラス!
スッキリしない終わり方をしてる。これからもアトラスとこの一般人の女の子は出口のない関係を堂々巡りしていくんだと思います。
男密度100%の星座で本編では色恋沙汰皆無だけど、こいつらもちゃんとやってるんだぜアピールです。
Life is a junk game
―――自分が彼の、都合の良い女ポジションに付いていることは自覚している。
彼...黄道十二宮という非合法な組織。牡牛のアトラスの名を賜った男。
あの愛という存在を全否定したような(実際そうなのだろう)冷たい目をした男と、最初に関係を持ったのは何時だったか。
“アイツに見返りを求めるのは無駄だよって俺教えてあげたよね”
アトラスの相方だという男・エレクトラに、呆れ半分に慰められたのは、つい先日のことだ。いや、慰められたというよりは、暗にもう諦めろと言われたのかもしれない。
そう、私がいくら彼を想ったところで、彼が私を想い返してくれることはない。
こうしてずっと思いを寄せていればいつか、なんて初めは期待したものだけれど、今はこの先どれだけ待ってもアトラスがこちらを向いてくれないということを理解してしまっている。悲しい事に、理解してしまったのだ。これは事実で真実で、覆ることはないだろう。
もう、やめてしまおうか。
何度もそう思った。
それでも連絡先を、どうしても、どうしても消すことが出来ずにいる。
アトラスの特殊な職業柄、こちらから連絡することはない。だから、連絡はいつもアトラスの仕事が一段落ついた頃、向こうからある。それも、数カ月単位。遠距離恋愛とはいえ電子機器が発達したこの時代、物理的距離はあれども連絡さえマメに取れれば、最低限互いの存在を感じることは出来る。連絡自体が滅多にない関係など、遠距離恋愛どころの話ではない。
尚且つ常に受け身に回る私には、向こうがこちらに愛想を尽かしても、知る術などないのだ。いつ最後になるかが判らない関係。
もう連絡は来ないかもしれない。もう二度と会うことのない関係になってしまったのかもしれない。そう思いながら、あるかもわからない長すぎる次の連絡を、毎回待ち続ける。
アトラスは、“次”を予感させるような言葉は、一切口にしてはくれないから。
そして気まぐれに、アトラスから入る連絡に、私は毎回安堵の息を零し、無様に尻尾を振るのだ。呆れかえるくらい、莫迦な女。
彼が私に会いたがる時は、決まって彼曰く「ムナクソ悪い」仕事を終えた後。その鬱憤晴らしと相場が決まっていた。
つまり、私を求めてのことではない。
それを解っていながら、私が彼の要求に応える理由は、嬉しいからだ。
何が。
自分が、彼の逃げ込む先であることが。
本当に、私はどこまで馬鹿な女なのだろう。頭が悪すぎてほとほと自分に嫌気が差す。
...エレクトラも、きっとそう思っているに違いない。
いつも苦虫を噛み潰した様な顏で、お前は十分良くやったよと言って身を引かせようとして来るのは、彼なりの優しさなのだろう。
誰よりもアトラスを近くで観ている男だから。アトラスの半身のような男だから、きっと私よりも余計に感じているのだ。私のこの想いが、どれほどアトラスにとって無意味なものであるのかを。
アトラスの瞳は、とても空虚だ。
何も映してはいない。
孤独に飢えた獣―――なんて表現が生ぬるく感じるほど、彼の心は空っぽに思えた。
飢えすぎて、飢餓状態であることすら忘れている。そんな感じがする。
だから、そんな彼を見た時、なんとかしてあげたいと思った。
きっかけは同情だったのかもしれない。アトラスからしてみれば、迷惑な話だろう。
私が、埋めてあげられたら。そう、思ってしまったのだ。安易にも。傲慢にも。思ってしまった。
だから例え一瞬でも、アトラスが満たされる瞬間が出来るのなら。この身くらい、いくらでも差し出せた。いくらでも心を砕けた。そこに一切の感情が無くても。アトラスの瞳が私を映してくれることは無くても。
どこまでも私の自己満足で最低な感情だ。アトラスを本当の意味で救うことも満たすことも出来ないばかりか、どうして私を見てくれないのかなどと悲嘆しているのだから、世話がない。
嗚呼それでも。それでも私は、アトラスが好きなのだ。悲しいほどに、悲しい目をしたかの男のことが好きなのだ。
愛して貰えないことを知っても、離れることが出来ずにいる。私が離れてもアトラスはきっと困らない。代わりを探すだけだ。それを判っていても、愛して貰えないことを知っていても、アトラスが他の女に触れるなんて耐えられない。
このままで良いなんて思っていない。思っていないが、身動きを取ることも出来ない。
どんな形であれアトラスが私を選んでくれる事実が、どうしようもなく嬉しいのだ。
「...いっそ貴方のところに私の依頼が入ればいいのに」
ずしりと身体にかかる重みにそう呟くと、アトラスは手放しかけていた意識を無理やり引き戻したというような顔をして、私の瞳を覗き込んできた。
そうしたら、貴方に全てを終りにして貰える。この関係も、行き場のないこの想いも、全て。他でもない、アトラスの手で。
これは、私が常々思っていることだった。依頼さえ入れば、アトラスはきっと、迷わず私の息の根を止める。一切の感情の持たない瞳で、一瞬で葬ってくれるだろう。
けれど、アトラスが返してきた反応は、少しばかり予想に反していた。
「それは困るな」
ごろんと身体が反転し、アトラスが下になる。
「困る?」
思考よりも先に、口が疑問を反芻していた。
やはり、私如き庶民を殺すような程度の低い依頼では、報酬がそう入らないということだろうか。なるほど、確かに天下の十二宮が請け負う仕事にしては、スケールが小規模すぎるのかもしれない。
ひとり納得していると、アトラスの綺麗な顔が少しだけ、歪んだ。
「...何か勘違いしているようだが。お前相手の依頼が俺の元に来たら、依頼主には消えて貰わなければならなくなる」
驚愕に値する言葉だった。まさかそんな言葉が返されるなんて思ってもみなかった。薄く笑って、流されるものだとばかり思っていた。
それなのに、アトラスのその言葉が、偽りだとも思えなかった。
“アイツに見返りを求めるのは無駄だよって俺教えてあげたよね”
エレクトラの言葉が蘇る。
―――本当に?
本当に私は、アトラスに与えるばかりで、何も貰っていないのだろうか。
アトラスは確かに“愛”を返してくれた試しはないけれど、今私の心は満たされている。
酷い人。こうしてまた私を簡単に縛り付けてしまうのか。
これではいつまで経ってもアトラス離れが出来そうにない。
ただ、これはちょっとした予感だが―――次の連絡を待つのは、今までより少しだけ、苦痛ではなくなるような気がした。
アトラスが“次”を連想させる言葉を言わないのは、明日をも知れぬ我が身だから。このまま帰って来れなくても、女の子が待ち続けるようなことが無いように。
ただそれが、アトラスのエゴであることをアトラスは知らないし、エレクトラは知っている。アトラスが次を告げなくても、女の子が待っている確信がアトラスにはなくてエレクトラにはある。
アトラスと女の子はアトラスの言葉足らずが原因で心のすれ違いが半端無い。しょうもな...。
アトラスは稼業故に強気に出られないのでエレクトラは「あの子のこと守る自信がないならいい加減離してやれよ可哀想だろ。それが出来ないなら傍に置く覚悟決めろ」とかお節介をやいています。
女の子を諦めさせようとしてるのは痛々しくて見ていられないから、いっそ別の男とさっさと幸せになっちまえよとかそういう類のもの。こっちも言葉足らず。みんな言葉足らず。アホなのか。
まだ当分はこんな危うい関係から逃れることが出来なさそうな2人。
頑張れアトラス!




















