(10)祭礼

ユダヤ教では、下記のように、ほぼ1年を通してさまざまな祭礼日が設けられている。ユダヤ教では、聖書に記載されているもの、歴史的出来事を記念するもの、あるいは古くからの慣習などが祭礼として記憶されている。ユダヤの人々は、毎年、祭礼を行うことを通して、民族の歴史を振り返るとともに、祖先が経験した苦難や歓びを追体験するのです。

祭礼は、次の3種類に分類できます。第1は、聖書に記載されて要請されているもので、新年祭、贖罪日、仮庵祭、過越祭、七週祭(収穫祭)などがこれにあたります。第2は、聖書に記載されている出来事が、のちに祝祭として行われるようになったもので、ハヌカ祭、仮装祭、オメルの33日祭、アブ月九日祭などがこれにあたります。第3は、古くからの慣習に基づいたもので、律法祭、樹木の新年がこれにあたります。第4は、近年の出来事に関する記念日で、ニサン月27日のホロコースト記念日、イヤル月4日の戦没者追悼記念日、同月5日のイスラエル独立記念日などがこれにあたります。

 

①ティシュリ(09~10月) 01日 新年祭

10日 贖罪日

15日 仮庵祭

23日 律法祭

②ヘシバン (10~11月)

③キスレヴ (11~12月) 25日 ハヌカ祭

④テベット (12~01月)  

⑤シュバット(01~02月) 15日 樹木の新年

⑥アダル  (02~03月) 14日 仮装祭

⑦ニサン  (03~04月) 15日 過越祭

              27日 ホロコースト記念日

⑧イヤル  (04~05月) 04日 戦没者追悼記念日

05日 イスラエル独立記念日

18日 オメルの33日祭

⑨シバン  (05~06月) 06日 五旬祭(七週祭)(収穫祭)

⑩タムーズ (06~07月)  

⑪アブ   (08~09月) 09日 アブ月九日祭

⑫エルル  (09~10月)

 

年初の「新年祭」に関して、「出エジプト記」には、現在の「ニサン」月、太陽暦では3月から4月にあたる月が年初の第1月とされています。しかし、現在のユダヤ暦では「ティシュリ」月が年初としています。「出エジプト記」に記載されている第1の月と現在ユダヤの人々が行っている新年との間には半年間のずれがあります。このようなずれがいつ、どのように生じたのかは、今のところ分かりません。

現在の年初であるティシュリ月は「出エジプト記」に記載されている月の順番でいうと第7月にあたります。ティシュリ月は年初であるとともに、「天地創造の時」といわれ、タルムードでは「世界の誕生日」とされています。最後の審判を想う日ともされています。

「レビ記」に、新年祭の日は安息の日(安息日ではないことに注意)として守り、角笛を吹き鳴らし、聖なる集会の日とするようにと記されています。シナゴーグや嘆きの壁の前で、訓練を受けた人が雄羊の角笛を吹き鳴らします。また、この日はいかなる仕事もしないで、主への燔祭の捧げものを用意するようにと記されています。燔祭とは、動物を焼いてその煙を神に届けるという動物供犠です。

この日は、「年頭」にちなんで魚の頭や、良い年を象徴する甘い蜂蜜をかけたリンゴが食されます。新年の挨拶は、良い年を意味する「シャナー・トバー」ですが、加えて「良い年のほうに書かれますように」ということばを付け加えるといいます。それは、新年最初の日に神が、各人の善悪の行為を生命の台帳に書きつけて、それぞれの人を良き年と悪しき年に振り分けるという言い伝えがあるからです。また、この日は、川や海の水辺に行って、心身の汚れを洗い清めるという習慣も見られます。