以下、そのレポートの内容をかいつまんで紹介します。

その記事によると、韓国の主婦たちの多くは、名節が近づくとさまざまな身体的、精神的な症候群に悩まされます。具体的には、「不安、焦燥、憂鬱、不眠、胃の障害、呼吸混乱」などの症状に悩まされるのだそうです。

 

韓国で4大名節といわれているのは、陰暦正月のソルラル、陰暦5月5日のタノ(端午)、陰暦8月15日のチュソク(秋夕)、そして冬至から105日目のカンシク(寒食)ですが、それらの名節のなかで名節症候群と関係が深いのは、家族全員が夫の実家に集まって食事を共にし、盛大な祖先祭祀を行うチュソク(秋夕)です。

 

多くの先進国と同様、近年の経済的発展にともなって、韓国社会は近代化を遂げました。それとともに、日常の社会生活の面では、両班文化として伝統的に尊ばれてきた儒教的価値観に代わって、自由と平等の価値観が広がり、個人主義的生活スタイルが主流を占めるようになりました。家族構成についていえば、大家族制に代わって核家族化が進んでいます。

 

そんな生活スタイルに慣れ親しんでいる韓国の主婦たちの多くが、名節が近づくにつれ、いわゆる名節症候群に悩まされるようになるというのです。それはなぜでしょうか。その理由は、名節の期間は韓国社会全体が伝統的な儒教的両班社会にもどってしまうからだと指摘しています。韓国の伝統的な価値体系は近代化とともに無くなってしまったのではなく、伝統的な名節の期間は、伝統が昔の姿で現れるのです。その伝統とは、朝鮮王朝時代の500年間、支配階層である両班たちが信奉してきた儒教的な価値体系です。それは、男性中心、年功序列、大家族主義、家父長主義で、祖先祭祀を重視する価値の体系です。そしてそれを裏で支える、というか、支えるはめになるのが主婦たちなのです。名節の期間、主婦たちは、慣れない夫の実家で、ひたすら従順に、全国から帰ってくる家族、親族を接待し、彼らの要求に応え、一方では、何種類もの祭祀の供物を注意深く準備しなければなりません。主婦たちは、場合によっては、極度の精神的緊張の中で、寝る暇もないというほどの重労働にさらされるのです。

 

日頃、近代的な価値体系の中での生活に慣れ親しんでいる韓国の主婦にとって、名節の期間に突如現れる伝統的な儒教的価値体系、そしてその中で精神的にも身体的にも過度の負担を強いられる状況に耐えきれなくなるというのは当然のことかもしれません。その結果として、韓国の多くの主婦たちの間で名節症候群といわれる症状が現れるものと考えられます。