韓国の出生率は、世界的にみてもほぼ最低値に近いほど低い。2023年度の合計特殊出生率でみると、韓国は1.11で、これは世界で227カ国中226位です。韓国はほぼ世界の最低に近いレベルなのです。合計特殊出生率とは、「一人の女性が生涯を通じて生む子どもの数」を表したものです。つまり、韓国は、一人の女性が生涯を通じて産む子どもの数が、ほぼ1人という数値なのです。これは、世代が代わるごとに、男性の数だけ、すなわち全人口の半分ほどが減少するということを示しているのです。(ちなみに、最低は、台湾の1.09です。日本は1.39で215位となっています。巨視的に見れば、日本も韓国とあまり変わらないともいえます。)

 

韓国の出生率はなぜこんなに低いのでしょうか。韓国は家族主義的傾向が強い社会であるにも関わらず、この出生率の低さは驚きです。韓国の女性は、というか、韓国の夫婦は、なぜ子どもを産みたがらないのでしょうか。あるいは、韓国社会はなぜ女性が子どもを産みたくないような社会になってしまったのでしょうか。韓国は、子どもを産むことによる利益より、子どもを産まないことによる利益のほうを優先する社会になってしまっているかのようです。

 

少子化の一般的な理由としては、経済的に安定し、女性の社会進出が進むにつれて、女性が自立するようになるとともに、晩婚化がすすみ、子供を作る機会が減少していること、自由主義的な価値観が広がるなかで、社会生活の選択肢が広がって、子供を産むという選択の比率が相対的に低下していることなどがあげられます。

 

韓国においても、多くの少子化国と同様、この理由が当てはまるのはもちろんです。しかし、それだけでしょうか。出生率がほぼ世界の最低水準にまで達している背景には、韓国社会独自の特殊な事情があるのではないでしょうか。

 

それと直接関係があるのかどうかは分かりませんが、古い資料を整理していたら、ちょうど20年前の2004年にネットから拾い出した文章が見つかりました。

(参考:www.ilyosisa.co.kr/SUNDAY/SUN_0350/TM_0204.html(2004/09/13))

韓国の主婦たちのなかで、年に数度、祭祀の季節になると、不思議な症候群に悩まされる人が増えているということを紹介したレポートです。作者はハン・ジョンゴンという人です。

 

その症候群は、「名節症候群」あるいは「名節シンドローム」などと名付けられています。つまり、そのレポートは、韓国の主婦たちの間で見られる名節症候群に関するものなのです。20年前のレポートですので、変化が速い韓国社会の現状をどれほど反映しているのかは不明です。しかし、ネットには、今でも、韓国の「名節症候群」に関する記事が投稿されていますので、現在も、20年前と比べるとだいぶ弱まっているとはいえ、似た状況が残っているものと思われます。いずれにしろ、少子化の問題とは関係ないのかもしれませんが、韓国社会のなかでの女性の一端を知るための参考にはなるのではないでしょうか。