<十戒と契約の書>

モーセは、ユダヤの民を代表して、シナイ山で神から「十戒」と「契約の書」を授けられます。

そのうち、十戒について、聖書に次のように記されています。

 

「私は主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。

①あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。

②あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水野の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。私は主、あなたの神。わたしは熱情の神である。わたしを否む者には、祖父の罪を子孫に三代、四代までも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える。

③あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。みだりにその名を唱える者を主は罰せずにはおかれない。

④安息日を心に留め、これを聖別せよ。六日の間働いて、何であれあなたの仕事をし、七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない。あなたも、息子も、娘も、男女の奴隷も、家畜も、あなたの町の門の中に寄留する人々も同様である。六日の間に主は天と地と海とそこにあるすべてのものを造り、七日目に休まれたから、主は安息日を祝福して聖別されたのである。

⑤あなたの父母を敬え。そうすればあなたは、あなたの神、主が与えられる土地に長く生きることができる。

⑥殺してはならない。

⑦姦淫してはならない。

⑧盗んではならない。

⑨隣人に関して偽証してはならない。

⑩隣人の家を欲してはならない。隣人の妻、男女の奴隷、牛、ろばなど隣人のものを一切欲してはならない。」(日本聖書協会『聖書(新共同訳)』「出エジプト記」)

 

分かりやすいように①から⑩まで番号を付けましたが、これがユダヤ教の根本戒律である十戒です。

①ユダヤ教の神が唯一絶対の神であること、②偶像の作成・崇拝の禁止、③神の名を唱えることの禁止、④安息日の遵守など、ユダヤ教に特有の重要な戒律が前半部に集中していることが分かります。

 

「契約の書」には、死に関する罪、身体の障害、財産の損傷、盗みと財産の保管、処女の誘惑、死に値する罪、人道的律法などについて、神とユダヤの人々との契約が記されていました。モーセはそれを人々の前で読み上げて、神との間で守るべき契約の内容を確認します。

 

このシナイ山での出来事によって、ユダヤの民にはユダヤ教徒としての自覚が芽生えてきます。ユダヤの民は、自分たちが神から選ばれていることを知るとともに、神から十戒を授かり、さらに契約の書を受け取ることによって、神とユダヤの民との契約が、日常生活のレベルにまで具体的に及ぶことになるからです。

 

ユダヤの民は、B.C.13世紀末にカナーンに侵入し、神との「約束の地」に定着していくことになります。先述のように、すでに多くの民族が暮らしている地域に割り込んで定着するのです。

 

今日のユダヤ教徒にとっては、出エジプトは、「過越祭」、「律法祭」、「仮庵祭」の行事として記憶されています。聖書のなかに記載されている「出エジプト」がどれほど事実を反映しているのかは分からないが、少なくともユダヤ教徒の人々にとっては、「出エジプト」は歴史的事実として記憶されているのです。