聖書によると、神はさらに続けて、契約について次のように語ります。

 

「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生まれてから八日目に割礼を受けなければならない。あなたの家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。包皮の部分を切り取らない無割礼の者がいたなら、その人は神の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」

(日本聖書協会『聖書(新共同訳)』「創世記」17章)

 

ここで興味深いのは、ユダヤ教徒の男性が受けるべき割礼についての記述がみられることです。それは、神との契約を身体に記すこととされています。

この割礼というのは、一種の身体加工で、アフリカの部族社会において成人儀礼に際して少年たちに行われるものです。アフリカの部族社会では、男子が成人儀礼を受けて大人となったことを身体に記すために割礼が施されるのです。それをユダヤ教においては、神との契約のしるしとして応用されているのです。ここには、ユダヤ教が成立する過程において、アフリカの部族社会との結びつきが見て取れます。

 

ことのついでに述べますが、油を塗ることによって祝福を与えるという儀礼がキリスト教でよく行われます。キリスト教は、これを古代ユダヤ教から受け継いだものと思われますが、これもアフリカの部族社会で行われているものです。たとえば、花嫁を初めて花婿の家庭に迎え入れた際に、花婿の家の女性たちが、バターなどの油を花嫁の身体に塗って祝福を与えます。この油を塗って祝福を与えるという方法にもアフリカの部族社会の慣習との結びつきを見て取ることができます。