4)アブラハム(アブラム)

そのような預言者を受け入れる文化が存在した中近東に、ユダヤ教の最初の預言者が登場します。アブラムという人物です。彼はのちに神の命によってアブラハムに名前を変えます。じつは、このアブラムは、ユダヤ教の聖書に登場するのですが、実在の人物かどうか分かりません。現在、彼の墓も存在しますが、この墓も、後から聖書に合わせて造られた可能性があります。ただ、聖書に記されているアブラムと同じような役割を担った人物がいた可能性は充分考えられます。ちなみに、アブラムは実在の人物かどうか、現時点では不明確ですので、アブラムをユダヤ教の「神話的始祖」という場合があります。

その時期は、B.C.2000年紀の初頭と言われていますが、これもどれくらい事実を反映しているのか分かりません。

 

ユダヤ教の聖書というのは、キリスト教では旧約聖書にあたりますが、その聖書には次のように記されています。すなわち、ある日、神がアブラムに顕現しました。アブラムは、神に導かれて、生まれ故郷を離れ、一族を引き連れて、カナーンの地域を目指します。一行は、メソポタミアのウルという都市を出発し、まずは、ユーフラテス川にそって北西に向かい、ハランに到着します。

ここでウルが一行の故郷とされたのは、ウルが古来メソポタミア地域の由緒ある中心都市の一つですから、アブラム一行を権威づけるために利用された可能性があります。

 

一行は、ハランからさらに南西に向かって進み、カナーン地域に入っていきます。

カナーンというのは、現在のパレスティナのことですが、「乳と蜜の流れる地」と語られますから、当時は豊かな地域だったようです。しかし、この地域には、すでに多くの民族が暮らしていました。アブラムの一行は、神の導きとはいえ、その地域に割り込んでいくことになります。

 

5)ヘブライの民

初期ユダヤ教の人々は、もともとは羊を飼う遊牧民で、「ヘブライの民」とも言います。その「ヘブライ」ということばの語源をたどると、「外来者」あるいは「社会の外にいる人々」という意味があるそうです。ですから、彼らが「ヘブライの民」と呼ばれるのは、彼らが、外部からカナーンの地域に入り込んできたことを表しているともいわれます。