2.歴史

(1)古代イスラエル時代

 1)地理的舞台

ユダヤ教が生まれ出る舞台は、現在のパレスティナの地域です。ですから初めに、このパレスティナの地理的特徴についてお話します。

パレスティナは、地中海の東端に位置し、古代において地中海交易で活躍したフェニキア人が拠点としていた地域のすぐ南方に位置しています。

 

パレスティナは、古代の4大文明のうちの二つの文明圏に挟まれた場所に位置しています。すなわち、パレスティナの南方にはエジプト文明圏が存在し、北方にはメソポタミア文明圏が存在しているという場所です。したがって、パレスティナは古くから文明交流の要衝であったと考えられます。

 

パレスティナの北西には、地中海を挟んで古代ギリシャの文明圏が存在します。とくに、このギリシャに関しては、マケドニア出身のアレクサンドロス大王による東方遠征を契機に、紀元前4世紀以降、中近東地域のヘレニズム化、つまりギリシャ化が進みますが、それによってパレスティナも大きな影響を受けることになります。

 

さらには、ギリシャから地中海を西に進むとイタリア半島に行き当たり、ローマ帝国が存在します。ローマ帝国は、帝政に移行した紀元前1世紀ころから、地中海沿岸地域に急速に勢力を拡大し、やがて、パレスティナ地域も支配下に置くことになります。

 

以上のように、パレスティナの地域は、古くから周辺に巨大な文明がたびたび成立し、攻防を繰り返される場所のただなかに位置し、たびたびその攻防に巻き込まれ、ときには犠牲にもなったという場所です。アブラハムに顕現した神は、このような場所をユダヤ民族の永遠の所有地として指定したのです。