4.ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との交配

近年、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人との関係について、驚くべき研究成果が発表されました。両者が、なんと交配していたというのです。この発表に、研究者も含めて多くの人々が驚愕しました。それまでは、私たちの直接の祖先であるホモ・サピエンスと旧人と呼んでいたネアンデルタール人が交配できるとは全く考えていなかったからです。

 

ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスよりも先にアフリカを出て、中近東あたりで暮らしていたのですが、そこに後からホモ・サピエンスがアフリカから出てきて、両者が出会ったと考えられています。ネアンデルタール人が背広を着てニューヨークの地下鉄に乗っていても違和感がないだろうという研究者もいるほどですから、両者は、似通っていて、ある程度のコミュニケーションもとることができたのでしょう。この研究によって、昔の人々についてのイメージが変わってしまいました。体毛のないゴリラのような姿や立ち居振る舞いではなかったのです。

 

私たち現代人の遺伝子にもネアンデルタール人由来の遺伝子が数パーセント含まれているのだそうです。つまり、ネアンデルタール人の一部は、私たちの中に現に生きているのです。

 

この研究成果によって、進化の過程で分岐して20万年や30万年程度では交配可能であるということが分かったのです。そして、人類の進化はより複雑であった可能性が出てきました。人類は、進化の過程で交雑を繰り返していた可能性が出てきたからです。この研究成果を発表したドイツのペーボ博士は数年前、ノーベル賞を受賞しました。

 

 

5.遺伝子解析の可能性

古遺伝子解析の手法によって、いま、次々に、人類の進化に関する新しい成果が生み出されています。さらに、人類が、6万年から7万年前にアフリカを出て、どのようなコースをたどり、どのような経験をつみながら地球の隅々まで移動していったのかも明らかになりつつあります。くわえて、不明な点が多いといわれていた日本人の起源や正体も、まもなく明らかになる日が来るのではないかと大いに期待しています。