1.プレゼントの不思議な力

私たちは日ごろ様々な機会に、プレゼントをやったり貰ったり、頻繁に繰り返しています。生活の中のごく普通の行為です。

 

でも、プレゼントには不思議な性質があります。たとえば、プレゼントを貰ったとき、とても嬉しく、浮き浮きした気分になることがあります。一方、時によっては厄介だなあと感じたり、嫌だなあと感じることもあります。しかも、プレゼントを差し出されると、基本的に断ることができません。プレゼントを拒否する場合は、相手との関係がさらに悪化するか、あるいは途切れてしまうのを覚悟しなければなりません。

 

プレゼントのどこに人を喜ばせたり、嫌な気分にさせたりする力があるのでしょうか。あるいは、プレゼントの何が受け取りを強制するのでしょうか。そもそも、プレゼントとは一体何なのでしょうか。

 

 

2.何を渡すのか

人に何かを無償であげるというのがプレゼントです。国語辞典には「贈りもの」と書かれています。

人に気前よく何かをあげること、これがプレゼントです。

では、何をあげるのでしょうか。いろいろなものがプレゼントになります。あらゆるものがプレゼントになるといってもいいのかもしれません。しかし、すべてのプレゼントの品物には共通している点があります。それは、プレゼントするものはすべて自分のものであるという点です。たとえお店で購入したものであっても、いったん購入して自分のものにした後で、それをプレゼントするのです。

 

 

3.プレゼントの正体

つまり、プレゼントは、自分のものを相手にあげるという行為なのです。これをもう少し別の言い方をすると、プレゼントは、自分の一部を相手に与えるということです。さらに言えば、プレゼントは、自分の世界の一部を相手の世界に送り込むという行為です。

 

ですから、プレゼントの正体は送り主の一部だということです。つまり、送り主そのものがプレゼントの品物という姿で自分のもとにやってくるのです。その贈りものを拒否することは相手を拒否することになるのはそのためです。そして、相手がやってくるわけですから、相手をどう思っているかによって、受け取ったときに嬉しくもなり、嫌な気持ちにもなるのです。

 

 

4.プレゼントの対抗措置

相手の世界からやってきたプレゼントはずっとそのまま自分の世界に残り続けます。借りが残るのです。しかも、お金を支払って借りを帳消しにするということができません。そこで、バランスをとるための対抗措置として、こちらからもプレゼントを相手の世界に送り込むのです。

 

日本社会はお中元やお歳暮をはじめ、いろいろな機会にプレゼントを贈り合う習慣があります。それは、プレゼントを贈り合うことによって、お互いに借りを作り合っているのです、そして、そうすることを通してお互いの絆を確かめ合っているのです。