1.安息日とは

安息日という考え方の起源はユダヤ教です。安息日というのは、ユダヤ教の聖書(旧約聖書)の天地創造の物語に基づいています。それによると、週の最後の日が安息日になるはずですから、安息日は土曜日でなければなりません。ユダヤ教では土曜日を安息日としています。安息日には、ユダヤ教徒は労働にあたるものは、家事も含めて、何もしません。もっとも、ユダヤ教といっても、現在では、厳格な正統派から世俗派まで多様になっていますので、安息日の規則も多様化していると思われます。

 

 

2.曜日の初日は

曜日は、本来は、日曜日に始まり、土曜日で終わります。すくなくとも、安息日が創られた時代は間違いなく、日曜日が週の初日で、土曜日が最後日でした。

しかし、近年では、月曜日を週の初日とし、日曜日を最終日とする考え方も出てきています。そして、それに基づいて、週の終わりに土日を配するというカレンダーも作られています。「週末」ということばが、週の終わりの土日の休日という意味を含んでいるのも、土日をもって週が終わるという考え方が背景にあるからだと思われます。

 

そこから、さらに、日曜日が休日であるのは、キリスト教の安息日だからだという誤解も生じています。安息日とういのは、ユダヤ教の安息日しかなく、キリスト教はユダヤ教の安息日を踏襲しているだけなのです。

 

 

3.日曜日は主日

日曜日がキリスト教にとって特別な日として設けられたのには、別の理由があります。キリスト教において重要な日は、イエス・キリストの復活ですが、それが起こった日が日曜日だったというのです。

ですから、キリスト教では、その日(日曜日)を「主日」と呼んでいます。

 

 

4.主日がなぜ休日に

では、その主日が休日になったのには、どういう経緯があったのでしょうか。

主日である日曜日が休日と定められたのは、4世紀前半、ローマ皇帝コンスタンティヌスⅠによってです。キリスト教がローマ帝国内で公認されたのが西暦313年ですから、それから間もなくのころです。そのころ、皇帝は、国内をなんとか一つのまとめ、結束させたいと考えていました。そのころのローマ帝国は、拡大しすぎて、国内の結束が乱れ始めていたのです。皇帝は国内の結束を取り戻すために、キリスト教を利用しようと目論んでいたのです。そのためのキリスト教の公認でした。それまでさんざん弾圧してきたキリスト教を公認するというわけですから、皇帝にも相当の決心があったのだと思われます。

 

 

5.皇帝の思惑

そして、皇帝は、キリスト教にとって重要な日が日曜日であることに着目し、日曜日を休日とする令を出します。それが321年です。日曜日は、キリスト教徒にとって重要な日であるから、仕事を休み、その出来事を偲びながら、教会で礼拝をする日と定めたのです。つまり、皇帝は、ユダヤ教の安息日に代わる新たなキリスト教独自の聖なる日を創り出したのです。そうして、全国民をその同じ行事に参加させることによって帝国内を一つにまとめようとしたのです。

キリスト教徒の側も、キリスト教が優遇される政策であり、しかもユダヤ教と差別化できるというメリットもあるので、その政策を受け入れたのです。

 

 

それ以来、キリスト教では、ユダヤ教の安息日ではなく、キリスト教の主日が第一に重要な日として休日となり、それが受け継がれて今日に至っているというわけです。

つまり、今日、世界的に普及している日曜日の休日は、ローマ皇帝コンスタンティヌスⅠが帝国を統治するための戦略を今に伝える遺物なのです。