5年前
子どもを自転車の後ろへ乗せて
公園からの帰り路でのこと

わたしは 道路の本線を直線走行していた
左に脇道があり
そちらから
自転車に乗ったおばあさんが
向かってきているのが視野に入っていた

そう 視野に入っていたけれど
当然 前後左右を確認して
本線に侵入してくるもと思って
わたしは 直進しかけたけれど

おばあさんは なんの確認もなく
わたしの存在にも気づいていなかった
わたしは おばあさんの直前で
おばあさんを回避しようと
本線の中央側へハンドルを切ったけれど
おばあさんは
わたしの自転車の後輪に突っ込んだ

わたしは 衝撃を受けよろけながらも
倒れず右路肩へ走り停車した

そしてこどもを降ろし
おばあさんに 駆け寄った
おばあさんの自転車は倒れ
顔にケガをして 
鎖骨や肋骨をさすっていた

こういった時「大丈夫ですか?」
というのは愚問だ
大丈夫なわけが無いから

「立てますか?支えます」
と声をかけた
愚問だと思うと同時に おばあさんは
「ごめんなさいね」
と言うだろうと予想していた

が おばあさんは悔しそうに
つらそうに 痛そうに
「わたしが悪いの??」
と言うのだった

もちろん 確認もなく道路に侵入し
わたしの自転車に突っ込んできた
わたしの子どもの脚には
おばあさんのタイヤ痕もついている

その付近にいた トラック運転手さんや
工事現場の人たちが数人
近づいてきた

おばあさんは 「私が悪いの?」
「あなた自転車飛ばしてたんちゃう?」
と言ったので
「この自転車は そんなにスピードは出せません、こどもを積んでいるのだから」
「そちらが近づいてきたので むしろ右へ逃げたんですよ」
と言うと
「私のことが見えてたなら なんで早く避けてくれへんかったん」
などと 今度は早く走れと言わんばかりの発言
つまりは ぶつかるまで私の存在には気づいていなかった

だからここは冷静に 
そして謝らない態度でよい

近づいてきたおじさまたちが
おばあさんを移動させてくれた
そして おばあさんではなく
わたしに 事情を聞いてくれた

おばあさんは被害者的な態度をやめないので
おじさまたちは 
「警察へ行きっ、お姉ちゃん 警察呼び」
と提案してくれた

わたしもそれには同意で
「警察を呼びますね」
とおばあさんに言った
すると
「わたしが悪いの?怪我したんやで
警察はイヤや」
と、ごねた

わたしは落ち着いて
「どちらが悪いかは わたしが決めることではないのです
警察へ行けば道路交通法で判断してくれます」

「わたしが悪いの??痛いっ痛いっ」

おばあさんは、わたしがごめんなさいと言う立場で、救急車を呼ぶと言う展開になると予想していたと思う
でもうちの子の脚にタイヤの跡がある以上
確認もなしに突っ込んだのはおばあさん

おじさまたちは 仕事中だからと
おばあさんに「いつまでもこうしててもアカンで」と声をかけて
その場を去ろうとしたので
わたしはお礼を伝えた

すると次に わたしより少し若い男性が近づいてきて そっと
「警察で証拠がいるようだったら
ここへ連絡して
うちのドライブレコーダーに映ってると思うから」
と 名刺を渡して去っていった
近くの解体業の社長さんだった

わたしは心強くなり勇気が出た
ありがたくて泣きそうになったが
おばあさんに 冷静に話した

「わたしはこの後も予定があって
もう行かなければなりません
でも警察を呼ぶのであれば
それはやめて警察に電話をします
でも警察がイヤなら これ以上お話はできません
2人で話しても解決しないのです」

「私が悪いの??」

「あなたが悪いか は
わたしが決めることではないのです
警察に決めてもらいましょう
わたしはそれに従います」

「警察はイヤ!」

「それならこれ以上お話できることはありませんし、この先この件でお会いすることもありませんがよろしいですか」

この二択しかないので
おばあさんは不満を抱えて
わたしと別れることになった

つづく