先日掲載した、Tass通信の記事のもととなったBloombergによるプーチン大統領へのインタビュー記事のうち、Tass通信に未掲載の部分を紹介する。

 

後段、ロシアは原油価格の下落によるリセッションと、シリア問題を巡る欧米からの経済制裁という「ダブルパンチ」を受けており、厳しい状況に置かれていることが示唆されている。

 

(以下、East Media Newsによる意訳

 

原題:Putin Sees Opening With Japan on World War II Island Dispute

媒体:Bloomberg

日付:2016.9.2

種類:インタビュー記事/要人発言(プーチン大統領)

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-09-02/putin-says-japan-compromise-possible-in-world-war-ii-island-row

 

木曜日、安倍首相はロシアとの経済協力のために新たな大臣を新設している。特定の国を名付けた大臣の地位はこれだけである。共同通信は今週、日本はたとえ島嶼紛争が進展しなくともロシアの極東発展を支援すると報道した。

 

Temple大学のBrown氏は、「安倍氏はロシアとの関係に熱心になっている。」「長期的な島嶼の取引を得るとの希望の中でロシアと関係を構築するため、経済協力を利用している。」と語っている。

 

またクレムリンの発表によると、会談の初めにプーチン大統領から安倍首相に「相互の接触を進展させるため、経済界の意向をサポートすることは政治的なレベルでとても重要」であるとの発言があり、安倍首相はこれに対し、日本は「隣人として」、地域におけるロシアとの協力を「発展させるために最大限の支援を行う」用意があると応答した。

 

プーチン大統領は、ウラジオストクの経済界のリーダーたちに対して、ロシアはルスギドロ社(水力発電)への日本の投資を歓迎し、これには「なんの政治的制約もない」こと、港湾の液化天然ガスの日本向け輸出能力を向上させる用意があるとも語っている。

 

さらに、もし日本がYamal LNGを含むガス・スワップ契約に興味があるのならば、「席について、物流について適切に考える」であろうと発言している。

 

プーチン大統領は杭州G20サミットにおいて、安倍首相との会談を行う予定である。大統領は安倍首相に対して、ロシアに最悪のリセッションをもたらした原油価格の崩壊に加え、ロシアがウクライナ危機によって米国とEUの制裁で孤立させられているわけではないことを示したいと強く思っていることだろう。

 

中国はロシアの最大貿易国であるが、昨年に比して契約は28%減、636億ドルに減少しており、国家目標の1000億ドルには遠く及ばない。日本はロシアにとって8番目の貿易相手国であるが、取引高は31%減、213億ドルに減少している。また、モスクワの税関当局によると、ロシアからの輸出のうち、一次産品※が四分の三を占めている。

 

(以上)

 

※一次産品:農産物、鉱物、原油などの資源

 

先日の解説では、中国並みの高度な信頼関係を築くため、「一帯一路」に対抗できる経済圏構想を提示すべしと提言したが、足元を見れば、中国との現実の貿易取引額は636億ドルであるという。

 

まずは日露間の貿易取引額について、中国のそれと肩を並べるか、上回るところまで関係を拡大していくことが重要なのだろう。日本も中国の様に、ロシアと1000億ドル規模の貿易額を目指す協定を検討しても良いのかもしれない。

 

また、ロシアは原油・鉱物など一次産品の割合が輸出品目の50%以上を占めていることから、国家戦略が資源価格の動向に大きく左右されてしまう。その意味では、8項目の経済支援を通じてロシアのハイテク産業を育成するよう説いた馬淵氏の堅実な提言は的を得たものと言うことが出来るだろう。

 

足元の手堅い協力関係と、将来の構想の両者を提示できるような対露外交の大技を期待したいものである。