Pravdaに北方領土問題に関する記事が掲載された。

 

日露両国が向かっている方向を「正しい」と評価しつつも、安倍首相が提示している経済支援策は領土返還にとってあくまで「信頼を築く」期間にすぎず、段階的なプロセスが必要としている。

 

また、ロシアとしても平和条約の締結は必要だが、「領土を売るようなことはしない」ことを確認する記事であった。

 

(以下、East Media Newsによる意訳)

 

主題:日本との領土紛争解決の決心は揺るがない

原題:Russia remains determined to resolve territorial dispute with Japan

媒体:Pravda

日付:2016.10.11

種類:報道記事(Domitry Peskov報道官)

http://www.pravdareport.com/news/russia/kremlin/11-10-2016/135842-russia_japan-0/

 

プーチン大統領のDmitry Peskov報道官は、日本との領土紛争を解決するためには忍耐と相互信頼が不可欠であると発言した。

 

Peskov報道官は、Novosti通信に対して「領土紛争については、更なる忍耐が不可欠であり、段階的なアプローチが必要とされる。最も重要なことは、貿易と経済関係が発展する間に生ずる相互信頼という、確実な基礎が必須であるという事だ。」と語った。

 

Peskov報道官によれば、二国間の領土紛争について、誰も合意がなされるとは言うことができないにもかからず、ロシアと日本は正しい方向に向かって動いている。

 

以前、日本は幾つかの北方四島と引き換えに投資プロジェクトをロシアに提供できるとレポートされたことがあった。

 

日本人は2つの小さな島‐色丹と歯舞‐に注意を寄せてきた。日本政府の最終目標(Tokyo's Goal)は、少なくとも二島返還のプロセスをスタートすることにあるか、あるいはそれについて議論することにあるが、一部の政府関係者は四島返還を交渉すべきだと強く主張している。

 

日本は極東において重要な投資を行う用意があると宣言している。それは道路や病院、都市インフラの建設といったプロジェクトである。換言すれば、これらのプロジェクトは回収期間を短期に設定してはいないという事であり、北方領土問題において10年間で200億ドルの埋没費用を見込んでいる。

 

ロシアは北方四島の一部(South Kuril)に関して、日本と折衷点を探していく決心は揺らいでいない。付け加えれば、ロシアは第二次大戦の結果に続く平和条約の締結を欲している。また同様に、プーチン大統領は、ロシアは日本に対する島嶼売却は検討していないこと明らかにさせている。

 

(以上)

 

シリア問題で欧米との対立を深めていることから、ロシアも日本との平和条約締結によって、イメージ悪化を食い止めようとしているものと思われる。

 

また、文中では「歯舞と色丹」の二島返還プロセスを軌道に乗せる事がTokyo's Goalであると表現している点については、日ソ共同宣言(1956年)以来、両国の間で確認されている、「平和条約締結の際に二島を返還する」という内容に沿っているものと考えられるが、日本側で主張されている「全島返還」や「段階的返還」とは異なり、ロシアは「二島返還」で北方領土問題を幕引きさせる意思表示ともとれる。

 

事実、北方領土で建設が進むロシアの軍事基地は国後・択捉島に所在している。

 

→北方領土で軍施設建設進む ロシアが発表

産経新聞

201679

http://www.sankei.com/world/news/160709/wor1607090020-n1.html

 

ただ、これらの基地はクリミア危機に対して日本が対露制裁に加わった時点から建設が強化されていることもあり、日本政府の対応如何によってはロシア側の出方も変化してくる可能性はあるのかもしれない。

 

大局から考えれば、ロシアを中国と「べったり」にさせず、可能な限り対中・対北抑止に参加させることが日本の安全保障にとって重要であり、そうした戦略の中で北方四島の解決を探っていくことが必要と思われる。

 

米国もオバマ政権8年間の下で孤立主義が進んだ結果、中東の混乱が放置され、アジア太平洋への「リバランス」と言っても何か具体的な対応策が行われている訳ではない事から考えれば、日本は今後日米同盟を基軸としつつも、独自の外交を考えなければいけない時期に来ていると言うべきだろう。

 

「考えられない事を考える」時期である。