紀行文を求める旅に行く
黒い縁取りはちあきなおみの喝采で、赤い縁取りは私の速達だ。
速達という形式で手紙を受け取った経験は初めてで、「なんやこれ! どうしたらいいんや……。そもそも速達って380円もするんか!」などと大いにたじろいた。
さらにいうと送り主である新潮社の編集者某氏とは、4年前に紀行文でお世話になって以来年賀状のやりとりがあるだけだったので、ますます取扱いに困った。
「後は行くだけ。連絡乞う。」で括られた当該速達に対し、「お手紙ありがとうございましたメール」を返信したが、果たしてこれは正しい大人の対応だったのだろうか。
それからおよそ1週間後、すけべ心とミーハー心くらいしかない先日の私はというと、「やったね、またあのおしゃれ新潮社に侵入できるわい!」とうきうきしながら神楽坂を歩き、いざ侵入!というタイミングで某氏に取り押さえられ、新潮社前を華麗に通過して飲食店に向かった。
飲食店到着後、開口一番に「そそそそ速達ってびっくりしましたよ! なんか誰か不幸があったんかと思って開封するのめちゃくちゃ緊張してまいました」と福井のイントネーションで疑問を投げかけた。
すると、「ああ、急ぎでないときはいつも手紙にしてるの。急いでたらメールか電話するんだけどね。だから返事はメールでよかったんだよ」という実にあっさりした回答をいただいた。ごもっとも。
4年前に書いた紀行文のタイトルは「私の親鳥 東急東横線」というもので、わずか15枚ほどの短いものだった。
今回は広大で長大になる予定で、始まる前からすでに脈拍数は上昇気味である。
書くために行く、こんな目的の旅もあるのだ。
「遠足」と表現して「仕事」と言い直された夜だった。
そんなわけで、きっと忘れた頃にお知らせをすると思います。よろしくお願いします。
書きたい分野について、「書かんか?」と言ってもらえるのは本当に嬉しくてありがたいことですね。
喜びのあまり大手町で迷子になりました。元定期券ユーザーなのに。
ちなみに4年前にお世話になったのは、こんな雑誌です。
新潮45 2013年 05月号 [雑誌]
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